■山口小夜子という名前は聞き覚えがあるようなないような、という感じだったのですが、写真を見たら思い出しました。化粧品のポスターでお見かけしたことがあったような。アパレルデザインの展示は過去にも都現美でありましたが、ファッションモデル・俳優の追悼・回顧展のような形式の展示はずいぶん珍しいのではないかと思います。ファッション・アパレルは苦手なのですが、面白く感じたところもありました。
面白かったのは資生堂広報との絡みで、日本人形のようなルックスの山本小夜子さんのビジュアルと和風に舵を切った資生堂のブランドイメージの変化が、トップモデル・山口小夜子の存在に引っ張られたのか、広報側ディレクターのコントロール下にあったのかわからかったことです。見ている感じでは「資生堂」というブランドより先に「山口小夜子」という存在が先にたっていて、ブランドは意識されなくなっていました。もともと化粧品そのものに興味はないからかもしれませんが。
全く違う観点で面白かったのは、コマーシャルフォトで使われるコンタクトプリントと実際のプリントが並べられていた点で、コンタクトプリントにはトリミングの指示も書き込まれていました。そうした撮影後のプロセスは知っていましたが、実際に目にできたのは初めてです。
当たり前ですが、展示では山口さんのビジュアルや舞台衣装の展示がメインですが、観ているうちに「山口小夜子」という生身の存在感が希薄になっていき、どなたかの言葉ではないですが「POPアイコン」という表現がしっくりします。最初は生身の山口小夜子さんがビジュアルを決定していたのだと思うのですが、それが「山口小夜子」というブランドイメージそのものになってしまい、そのイメージに自分を嵌め込んでいるような感じがしました。それは自己実現なのかもしれませんが、当人の言葉が展示ではあまり見られなかったことが一因だったかもしれません。もっとも、YouTubeで観ることができるインタビューなど見ていると、却って謎めいてしまったかもしれません。