■こないだパシフィックリムを観て、その「怪獣映画」的な感覚をどこかに残したまま観てきました。Twitter上の評判は良いもので、その評判は確かにその通りでした。でも、どこか入り込めないものを感じたのも確かです。もっともそれはベースになっている日本のゴジラ映画でも同じなのでそれは仕方ない、というかゴジラは「怪獣映画」というよりは「災害映画」に近く、人間は起きている事象について主導的にふるまうことができない。だけど、「怪獣映画」としてはパシフィックリムのように人間側が主導的にふるまっている映画もあるわけで、そのフォーマットを期待していると少し不満は残る。地震や台風は過ぎ去るのを待つしかないわけだけど、怪獣というのが動物の一種であるように見える以上、どうにかなりそうと思わせる部分があるし、実際「パシフィックリム」はそこでどうにかしたわけです。
ただ、そのあたりの折り合いがつけば、これは大型の怪獣が勝手に暴れまくる中、いかにして被害を最小にとどめるかという話であることが解る。実際のところとどめられないわけですけど。英語圏の感想の中に「ゴジラは地震や台風ではない」というのがあったのですが、そういう感想を持つのもわかります。「パシフィック・リム」的展開を期待しているところもどこかにあるわけですが、そちらに比べると人間は誰もが脇役であって、主役が不在になってしまう。
サッカー中継にたとえるなら芹沢博士(渡辺謙)は解説者であり、フォード・ブロディはピッチレポーターといった役回りで、つまりは狂言回ししかいない。主役達はフィールドの中で走り回っていて彼らの声をちょくせつ聴くことはできない。
ゴジラ映画はベースになった邦画ももともとそういう構造を持っていて、コミュニケーション不能な相手でありつづけた。どちらかというと(平成)ガメラ映画の方がまだコミュニケーションがとれていたかな。今回のゴジラ映画は早々に続編制作が決まったみたいだけど、ベースの映画とは別にそのあたりのフラストレーションを多少なりとも解消してくれたらうれしい。