■東京オペラシティーアートギャラリー(TOCAG)の企画展「家の外の都市の中の家」はTOCAGで毎年1、2回は開催されている建築もの。今回はヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展帰国展で、アトリエ・ワン、西沢立衛、北山恒の3組による住居のコンセプト、事例の展示になるのが、今までTOCAGで観てきた建築ものと違うところかもしれない。
〈メタボリズム〉は森美術館の企画展でも使われているキーワードだけど、「新陳代謝」の意。スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきた東京の街を簡潔に表現している。少し前はそれが西欧の都市建築物のような文化的ストックを生まないとして非難されていたようにも思うのだけど、今は再評価されているらしい。〈メタボリズム〉そのものは1960年前後に生まれたコンセプトで、特に目新しいものではないし、あえて言えば、江戸の頃から繰り返されてきたスクラップ・アンド・ビルドを言い換えただけのようにも思える。
ただ、そこは実際に住居デザインに携わってきている人たちだけに、展示されているのは大掛かりなメガストラクチャではなく、集合住宅や個人住宅になっている。そこで重視されているのは近隣との関係性であったり、小世帯家族向けの住居という現代的な課題が盛り込まれ、地に足のついたデザインになっている。
面白かったのは北山恒の〈祐天寺の連結住棟〉。プライバシーの確保はあえてされず、入居しているほかの世帯の「気配」を感じることができるデザインとなっている。つまり、「コミュニティの形成」が強く意識されている。
ただ、どちらかと言えば収蔵品展や新人をとりあげるプロジェクトNが面白かった。特に収蔵品展038「保田井智之」の彫像作品が忘れがたい。展示作品は幾つもあり、そのどれもが同じ印象というわけではないが、「長円の夜」にあるような緊張感と象られた人物像が持つ存在感に惹かれる。比較的サイズが小さい作品では「心臓の箱」がアール・デコ風のようにも見えるフォルムが見飽きなかった。何か運動している過程を写し取っているわけではなく、停止した姿ではあるのだけど、何かに引き止められて静止しているだけのように見えてしまう。何か動き出しそうなものが無理に静止させられているような感じ。
プロジェクトNは石井亨。都市部での企業活動・消費社会を極彩色にカリカチュアして描く。友禅染の技法で描かれた画像はユーモラスな批判精神に富み、古典絵画に見られた構図なども見てとることもできて面白いが、ただ、批判の対象やその視線にはとくに新味があるわけではなく、その点では少し物足りないものはあった。d