■どうしたわけか新春に入ってビクトリア朝ブームがちょっときているらしい。森アートセンターではラファエロ前派展だし、三菱一号館もビクトリア朝後期にフォーカスした企画。もっとも三菱一号館がその時期を取り上げるのは毎度のことという気もする。ラファエロ前派ということなら、前回は2012年にバーン=ジョーンズ展があった。…毎度というほどでもないのかな。
1850年頃から1900年頃までの19世紀後半のイギリス美術界にあった「唯美主義」の運動を追った企画。19世紀ヴィクトリア朝後半のただひたすら彼らが想う「美しいもの」を追いかけた運動というのは、日本語の「美術」が持つイメージに近いのかもしれない。
ただ、おそらく目玉になったであろうラファエル前派の作品は六本木に持っていかれているわけで、その点ではちょっと物足りない感じも。単なる絵画にとどまらず、インテリアデザインや装丁など、幅広い運動の広がりを俯瞰することができたという点では、今までバラバラに感じていたアート・アンド・クラフツとラファエル前派との関連や、その背後にあったイギリス社会の空気などを併せて、歴史的な動きを追うことができたようで面白い展示でした。
例えば「唯美主義」の中から出てきたのが、ただひたすらに「美人画」というのもやはり当時の社会背景を感じさせて面白かったです。今の社会背景の中で「唯美主義」と謳って白人女性だけを描いたら、確実に物議を醸しますね。
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