■先日瀬戸内芸術祭期間中に開催された「シッケテル」展を観にいった丸亀市猪熊弦一郎美術館(MIMOCA)。瀬戸内のイベント終了と共に企画展も切り替わって「杉本博司 アートの起源」(科学)へ。アートの起源、というか、現代社会がいまある姿の起源をアートの形で表現したように見える。もちろん、時折ワイアードやジオグラフィックで目にするように、自然は美しい。その美しい自然を捉えた目があり、その自然の中で洗練されていった美的感覚というものもまた、ある。
せっかく四国に行くので、帰りは高松から船で豊島へ、とか考えつつ、岡山から瀬戸大橋線で丸亀へ。全国に数ある美術館の中でも駅から最も近いのがこの美術館だとおもう。丸亀駅前広場の敷地に隣接して、信号一つ渡ればもう美術館。その周囲には丸亀市の雑居ビル群が広がっていて、前回と同様、なにやらシュールな光景という印象は変わらず。
今回、MIMOCAは杉本博司展として丸1年継続して展覧会が続くが、期間は4つに分けられ、それぞれ〈科学〉〈建築〉〈歴史〉〈宗教〉をテーマに展示が入れ替わる。今の時期は〈科学〉
葉脈のようにも見える放電パターンを写し取った作品が基調モチーフとなって会場を飾る。2Fの会場にぐるりと並べられた〈偏光色〉は淡い色彩のグラデーションが写された作品。
雷光は古来より生活に深く結びついてきた。「稲妻」は稲が実を結ぶ時期の雷雨と結び付けられたことから生まれた言葉であるし、風神雷神図が示すように、人々のなかで神格化された現象でもあった。しかし、科学的な視線はその現象を解き明かし、手中のものとしてしまう。
その意味で3Fのインスタレーション作品群は、それぞればらばらにあるのではなく、科学がもたらした世界観の1つの変化を表現する1つの作品となっている。
科学的思考がもたらしたものは他にも多くあるが、〈雷神〉という日本人に解りやすいシンボルを〈放電パターン〉という「現象そのもの」を仲立ちとして〈ファラデーゲージ〉という科学(というより現代では「工学」だが)装置へと転換してみせる展示は面白い。
ただ、ちょっと会場の広さに比べると展示の密度が低いかな。
MIMOCAの後、高松へ移動。豊島に渡るつもりだったのですが、高松港-豊島便は月・火のみの運行で、そのルートはダメ。そうなると、一旦本土側に戻って宇野港へ回らないとならないわけですが、瀬戸大橋線と宇野線の連絡が悪く、豊島美術館の閉館まであまり間が無いことになりかねない、というわけで断念。豊島は機会があればまた改めて、といったところですが、直島とセットというのが妥当な感じがしている。機会があるかどうか、非常に微妙ですが。