■気がつけば秋もそろそろ終りそう。そういえば、兵庫県立美術館の常設展で金氏徹平の個展に「ブラジル日系人画家の系譜」では大岩オスカールの作品が展示されているのだった。その会期も終わり間近になっている。急げ神戸へ。神戸はこないだの六甲山ミーツアートに続いてこれで2回目。観光めいたことは全然していない。今回もたぶん、そういうのはない。
新神戸から三宮に出て阪神電車に乗り換えて岩戸駅下車。小雨。駅前の大通りに出て海側を見下ろすと大きな美術館の威容が遠目にもわかる。近づくと大きな石の塊のような建物で、威圧感を感じる。中に入ってみると、迷路のよう。実際、常設と企画展を観終わったあと、美術館の周囲を歩いてみたのだけど、どうもこの建物、広すぎて持て余しているような。順路設定が不自然だったり、入り組んでいたり、使われていない通路があったり、使いこなせていない感じ。
それはそれとして常設・コレクション展は古いものから新しいものまでいろいろ。他所でもよく目にする作家さんも多し。河口龍夫の「関係-種子」は国立近代美の個展で見たかな? 野村仁の'Grus' Scoreも国立新美で。藤本由紀夫の'Music Dust Box-1'は確か去年の冬に広島市現美のサイレント展で。'Ears with Chair'は都現美から移ったのかな。会場最奥はアニメーション作品が上映されていて、束芋っぽいと思ったら束芋作品'Dolefullhouse'だった。金氏徹平のブリコラージュ作品は以前、横浜美で観た個展に比べるとなんか印象が弱かったのですが、見せ方の問題なのか。
期待していた大岩オスカール作品は「雷雨」と「www.com」の2点。「www.com」は以前、都現美の「夢見る世界」展で目にしていて、「雷雨」は初見かな。大岩オスカール作品の特徴の一つに街が夢的世界に溶け込んでいくような構成があると思うのですが、その要素が弱い方の作品だったので、そこは少し残念。個人(赤川リカルド・タケシ氏)寄贈ということで、そのような批評は的外れだとは思いますが。
現代美術作品のコレクションは、一応他の美術館でも展覧会が行われた作家をフォローしておこう、といった印象も受けます。現代美術に特化しているわけではないようなので、バジェット的にバランスを取ることが求められるのでしょうか。このあたり、裏を取って書いているわけではなく、無責任な話です。
企画展は「ヴィンタートゥールコレクション」。スイス、ヴィンタートゥール美術館のコレクション展ということで、彫像作品を含めた、印象派の頃からキュビズム、シュールリアリズムの時期にかけての蒐集作品を時代に沿って展示するという、個人的には先日、東京オペラシティーのアントワープ王立美術館コレクション展で観たのと同じ構成。時系列を広く取ってしまうと、展示はこういうものなのでしょうね。ただ、作家はドラクロワやルノワール、ボナール、ジャコメッティ、クレーなど有名どころ多し。
個人的に気になったのはマックス・ビルの「22」(1953)という彫像作品で、白い大理石の板に2,3,4,5,6、と1つづつ増える孔の列が螺旋状に穿たれている作品。数秘術的な背景を感じさせるのですが、制作時期を考えればそれはないでしょうね。ただ、知性的な世界観がそこに表出しているようで惹かれた作品でした。