■さすがに印象に残る一日だった。この文章を書いているのはその当日だけど、この文章の公開日からすれば半月前のこと。東北地方太平洋沖地震が発生した日のこと。何気に携帯でTwitterをみたら、TLは「ゆれている」ツイートであふれていた。ただ、その数が多いことと規模が大きそうな内容で、いつもに比べると大きな地震なのかなと思っていたら、「宮城県沖で震度7」の地震情報が入ってきたのだった。
職場には東北地方に実家のある人がいて、さっそく知らせたら別ルートのラインでほぼ同時に情報を入手していた。その後はTLを流して経過観測していたら、状況の酷さがだんだんと解って来た。印象的なのは震源地付近の東北方面からの地元情報がほぼ全く流れず、東京以西在住者のツイートが多かったこと。ツイートが出てこないのは情報インフラまでダウンしているということだから。
そうこうするうちに都内の影響が大きいことがわかって、もともとその日は横浜に戻るつもりだったのが、新幹線が止まったために予定変更。都内の鉄道が全て運行見合わせになり、羽田、成田が空港閉鎖、中央道も不通とか、震源から遠い首都圏では交通機関がマヒ状態になったことがわかってきた。
ただそれでも自宅サーバーで稼動させている自分Twitterクライアントは動き続けていて、とんでもなく散らかっているかもしれないけれど、とりあえず帰るところは残っていることだけは解った。Webカメラを仕掛けておけばよかったと思う。
TLの傾向は、最初は各人の体験ではじまり、やがてメディア情報の転送が主体になり、そして被災者支援情報へと移り変わった。夜間に入ってからは震源地付近の被災救助情報が増えていくのだけど、リアルタイム性がないことと真偽の確認が取れないという印象が強まっていく。なにより、繰り返されるリツイートが情報鮮度を落としていく。そこに意図的にデマを流すアカウントもあって、情報の選別は大事なことだった。
実際に災害対応の情報インフラとしてツイッターを利用しようとするのであれば、このS/N比の低下を抑えないと効率は望めない。善意のリツイートは多いのだけど、ウラを取れるわけではないからどうしても情報鮮度が落ちてしまう。これは、ツイッターの利用者一人一人がそれぞれのTLで拾った時点でどのような状態になっているかを推測してリツイートするかどうか判断しなければならないことになる。一人一人が編集作業を意識しないといけないということなのだけど、その切り分け判断は人それぞれになるのだから、本質的にTLのS/N比が低下することは避けられないのだろうなとは思う。
そしてまた、通信ノードの早期投入がこうした広域災害ではとても有用なのではと思う。ソーシャルネットワークは悲鳴に近いつぶやきであふれたけど、どなたかがいみじくもツイートしたように「ツイートできるのは無事な人」なのだ。東北太平洋沿岸部の津波に襲われた地域では通信インフラが壊滅し、携帯電話のバッテリーがもつ間しか通信を確保できなかった。その後の避難所も通信的に孤立した拠点は多かったようで、ブロードバンドは望めないにしても簡易スペックな通信ノードを投入できれば支援もスムーズに行えるだろう。途上国向けの安価な無線通信インフラセットというのはすでにあり、それで使えるのではないのかなと思う。どこが確保して、どこに備蓄するかというのはあるけれど、災害派遣キットとして普段も運用できるのだから、それほど割の合わない準備投資とはならないのではないかと思う。