■定番施設のスケジュールに隙間ができて、ちょうどいいからと川崎の生田緑地へ。岡本太郎美術館。小田急向ヶ丘遊園駅で降りたら雨。折りよく来たバスに乗って生田緑地前で下車してあとは徒歩。
梅雨らしい天気の中、見通しの悪い林の間を抜けると建物が表れる。ちょっと迷った。
岡本太郎作品は黒と赤で力強く彩られたうねるフォルムが連想されて、他に彫刻も火炎土器の飾りを思わせる焔のモチーフのエコーを見てとることはたやすい。当人もインタビューでそのように答えているし。
その力強い作品を眺めていると、多少なりともパワーを貰うような感じはするのだけど、そこここに岡本太郎の(おそらく)等身大と思われる立ち看板が置かれているのはどうしたものか。
岡本太郎は自身の作品について「なんだこれは」という当惑感、衝撃を与えることを良しとしていたようだけど、今のこの時点で作品群を眺めていても、既視感がついてまわる。中には「明日の神話」のように実際に他で作品を観ているものもあるのだけど、初見の作品であっても「岡本太郎らしさ」として受け止めてしまう。
その作品が持つ力強さは変わらないにしても、作品を受け止める側はいわば「ポスト岡本太郎」の中で観ていて、作品群が発表された時とは違ってしまっている。観る側に「岡本太郎的作品」を受け止める下地が作られていて、戸惑うことは少ない。
作品そのものがもたらす衝撃というものは、発表当時とは違ってしまっているだろうけど、一つの時代にインパクトを与え、変えてしまったことは確かだろうし、この美術館にはそうしたインパクトを与えた作品が展示されている。そういう位置づけにある場所なのだろう。
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