■TOCAGの展示が切り替わり、建築から服飾へ。それにあわせてコレクション展も一新されて、若手作家作品の特集に。若手と言いつつ自分と同世代の作家も含まれていて、それで若手と呼ばれるのかとなにやら微妙な気持ちにもなります。
最初の展示室には小西真奈、伊庭靖子、山本麻友香。個人的には小西、伊庭は好きな絵で、特に小西の微妙に現実感の希薄な風景画にはいつも惹かれる。伊庭のフォトリアリスティックな絵画は、実物を観て描いたものではなくて、写真を観て描いたものだということはすぐに解るのだけど、写真よりはディテールがおちていて、どこかのっぺりしている。何を見ているのかは嫌になるくらい解るのだけど、微妙にフィルタがかけられているような感覚は消えない。写真の現像プロセスでは同じように仕上げるのは難しいだろうと思う。ソフトなのだけど、ピンが甘いわけじゃない。ソフトフォーカスというわけでもない。柔らかい光。
他に印象に強く残ったのは入江明日香の物語性を強く感じさせる作品「祇園守槿木」はずっと眺めていても見飽きない。ほかの人も同様だったようで、作品の前にあるベンチに腰掛けてずっと眺めている姿を幾人か見かけました。入江明日香さんという方の作品は今回初めて知ったことは大きな収穫でした。小説の表紙絵にでも使われそうな、絵が自らに孕んでいる物語を読み解いてくれと訴えかけてくるような力があり、またそうしたことを強く感じた経験というのはあまりありません。鴻池朋子のインタートラベラー展で観た絵にも似た力を感じたことはありましたが、鴻池さんの作品は幾つかの作品が組み合わさって物語が動き出すタイプだと思うのですが、入江さんの作品はそれ自体で自律しているような、その絵だけで物語世界の設定がまるごとひとつ提供されているような強い印象を受けました。
プロジェクトNは上西エリカ。ゆるく踊る色彩の波はきれいだし、良く観るとアルファベットの羅列で描かれていてそこに何か呪術めいたものが埋め込まれているように読めるのも面白かったのだけど、コレクション展の印象が強烈で、今回はちょっと弱い感じでした。