■三島のヴァンジ庭園美術館では10周年記念ということで企画展。これまでも常設のヴァンジ彫刻とは別に、現代美術作家の個展を展示していたけれど、今回は奈良美智や丸山直文、川内倫子、木村友紀、などなどグループ展。展示作品点数はそれほど多いとは言えないにしても、名の知れた作家の作品が並ぶ。
展示作品は「庭をめぐれば」ということで、庭園、あるいは自然を思わせるものが多い。草木や昆虫をモチーフにした作品が多く、「庭園」としてはわかりやすい。
面白かったのは植原亮輔と渡邉良重による「時間の標本」。分厚い本を開いたところに蝶がいる。その蝶は頁を切り抜いて彩色されているので本と一体化している。本にはその本が制作された時代が閉じ込められていて、いわば時代の標本であり、その「標本」という特性がピン留めされたように動かない蝶の姿が象徴している。おしゃれな作品。
他にも草間彌生の雑誌の表紙でしか見たことのない「天国」も見ることができました。村瀬恭子のウォールドローイングは展示室と展示室を結ぶ通路の壁に展示されていたのですが、通路にあるので歩きながら見るわけで、そうすると動きが感じられるようで面白かった。
他にも川内倫子は先日東京都写真美術館で観たばかりですし、木村友紀や中島有里枝、イケムラレイコもありと盛りだくさん。ただ、展示室の設定が中途半端で、普段はヴァンジ作品の展示に使われている会場の一部を使ってはいたものの、常設展示のエリアと明確に区切られているようでもなく、なんとなく置いてみましたという感じが残念。もともとヴァンジ彫刻作品の展示が主目的で、今回のような企画展示は添え物的に展示されているのはいつものことのようですが、展示スペースの使い方はもう少し検討されてもいいのではないかなと思います。
でも、企画展の方が目玉になってしまうと「ヴァンジ」庭園美術館としてはアイデンティティが問われるわけで、展示方法は難しいのでしょうね。
同時期、同じくクレマチスの丘にある「IZU PHOTO MUSEUM」では荒木 経惟の「写真集展」。なんだそれという感じもしますが、同時に昨年の3.11の時に制作されたスナップ群も展示されて、そちらが興味深かった。「何を見ても被災地に見える」という視線が、虚無的な(被災の程度の小さい)東京の姿を捉えていました。