■東京都写真美術館「写真のエステ」はコレクション展。写真が持つ美術的側面に焦点をあてた展示で、同時に開催されている企画が「日本写真の1968」や「世界報道写真展」(6月以降)で、こちらは写真の記録性に重きがおかれた展示で面白い。「写真のエステ」展示は冒頭に『喪われた存在の写真は…遠い星からの光が遅れて届いたように私に触れる』というリルケの言葉がエピグラフのように使われていて惹き込まれる。
写真が捉えているものは過去の光で、絵画と違うのは、実際の光がかつてあったことを示していることで、写真を視るという体験は確かに「遠い星からの光」に似ている。スローガラスではないから、当時の光そのままではないけれど。
「五つのエレメント」はその「光の痕跡」が作り出す美しさの要素を『光』『反映』『表層』『喪失感』『参照』に分けて整理し提示する。光、反映、表層の三要素は写真の物理的な特性だけど、喪失感と参照は視る側が持つ要素になる。写真に感じる「美しさ」は前3つの要素が大きく、「面白さ」は後2つの要素が大きいように思う。そのことは写真を視る経験がないと面白くならないことに通じている。自分の中に「写真」から何かを感じる回路ができてこないといつまでたってもピンとこないままで、その回路は無理やり多くの写真展を視て回ったことから次第に出来上がってきたように思う。
「写真のエステ」はシリーズになっていて、次回は「写真作品のつくりかた」となっている。写真の撮影技術から現像までの工程に焦点を合わせた展示となるそうで、勉強にちょうどよさそうだ。
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