■9月に入っていずれの施設も新しい企画展のスケジュールに。ただ、それでも隙間のような時期はあり、その合間に小さめのギャラリーを回ることにした。新橋の資生堂ギャラリー、京橋のINAXギャラリー、末広町の3331アート千代田。銀座線で移動できる拠点で、その終点には上野もあるけど、そちらではめぼしい展示は行われていないのでそちらは寄らず。
資生堂ギャラリーでは辰野登恵子の個展。名前に聞き覚えがないと思っていたのですが、作品を観てハラ・ミュージアムアークで一度目にしていることを思い出しました。ぼてっとした大きなマッスを描きながら柔らかいエッジをもち、優しい印象を受けます。
個展は油彩作品よりはリトグラフ作品が主題となっていましたが、リトグラフで制作された画像はエッジがシャープになっていて、少し違う系統になっていました。個人的には油彩の方がカラフルということもあって印象に強く、特に「赤の領域 I,II」の2作品がビビッドで惹き込まれました。赤で描かれる円を幾つも並べた作品で、ずっと見ていると背景に使われた補色の緑が浮かび上がり、むしろ前面に出てくるような心理効果を覚えてそれも面白かったです。「赤の領域」と言いつつも、むしろ緑が強調されているようで。
INAXギャラリーは黒崎香織の個展。視線を操作しようとする力強さを感じる作品で、若い人なのだろうなと思いました。視線を拒絶するような蛾のモチーフの使われ方、あるいは入れ子になった画像構成で描かれる風景画にはどことなく神経質な印象もあって、そうした印象も今の若い人の作品に共通しているような気がしています。
銀座を後にして末広町へ。千代田芸術祭が1週間というショートスパンで開催されていたからということもあったけど、どちらかというと3331に入居しているGallery Jinで展示されている個展が目的。田中栄子「empty」で、HPに載せられた青い色調の静かな雰囲気のドローイングが印象的。展示されていたのは油彩のほかに切り絵があり、いずれも穏やかな印象。その点では資生堂ギャラリーで目にした辰野登恵子の油彩と同じ雰囲気を感じました。
その時々によってブレることはありますが、その日は落ち着いた雰囲気のドローイングが好ましく感じました。逆に千代田芸術祭の方は元気がありすぎた感じも。
3331を後にして、秋葉原で店先をひやかしながら引き揚げました。