■あちこちの美術館が企画展の切り替わり時期だったり、すでに観終わったりして隙間ができた頃、twitterのTLでミズマアートギャラりーでギャラリーのオーナーである三潴氏とアーティストの会田誠氏とのトークショーの紹介情報が流れてきた。Ustreamで配信されたそのトークショーを観ていて、ミズマアートギャラりーで会田誠氏の個展が開かれていることを知り、そういえば高橋コレクション日比谷でも会田誠氏を含めた三人展が開かれているし、ということでギャラリーめぐりをすることにした。
まずは市ヶ谷のミズマアートギャラりーへ。「絵バカ」と題された個展で、とにかくデカイ絵。「万札地肥瘠相見図」のリニューアル作品は、背景に諭吉さんの万札をずらっと並べてその手前にナニか欲望めいたものがビカビカしている。いろんな色を塗りたくった山水画っぽい構図が見てとれなくも無い作品もあるけど、それらとは対極的な静かな空気が流れる細密に描かれた大作が「灰色の山」。サラリーマンの死体の山。IT機材やオフィス器具の残骸に紛れて。廃棄物のような描かれ方をされたサラリーマン群の姿は、まあ、そういうもんでしょうね。サラリーマンの圧倒的大多数は消費されてしまったわけです。
市ヶ谷から地下鉄有楽町線に乗って有楽町へ。高橋コレクション日比谷では「会田誠+天明屋尚+山口晃 誠がいく、尚がいく、晃がいく ― ミヅマ三人衆ジャパンを斬る ―」が開催中。一種のキャンペーン展開ということなんでしょうね。
「マイクロポップ」とか、「ネオテニー」とか、弱弱しい、線の細い作品とは違って、ずっと図太い印象がありました。ついさっきまでミズマで観て来たので、つい会田作品を。「下手」は水墨画の下手な模写というか、模写ほどの密度もないんですが、こんなんありなんだーと笑い出しそうに。「ジューサーミキサー」は国立国際の「絵画の庭」展でも観ていますが、要するにミキサーの中にびっしり女の子が詰め込まれていて、ミキサーカップの下の方では血の海になっているわけです。この作品がミズマで展示されていた「灰色の山」の兄妹作品だ、と聞くと「ジューサーミキサー」の意味合いも違って、というかより明確に見えてくるような気がします。
会田氏は「取り扱い注意作家」なんだそうですが、じゃあ彼が作品に反映させている(と思っているのだけど)アクチュアルな現実は見ない振りしていていいんですかと。そして、そんなことを思わせる作品は、確かに「マイクロポップ」や「ネオテニー」の内向き指向の作品とは違うわけです。