■ここんところ名古屋でべったりだったんですが、先日東京に戻る機会があったとき、ついでだからと都内の美術館めぐりをしてきました。東京都現代美術館と森美術館。ちょうど、展示が前回と切り替わっている時期だったし。都現美では『解きほぐすとき』『通路』、森美では『アートは心のためにある』展。清澄白河から六本木を回って自分では結構強行軍。
都現美は墨田区にあって、深川界隈の雰囲気と微妙なコントラスト。前回「Space for Your Future」で訪れた時は道がよく解らなかったりしたんですが、今回はあちこちにある案内板を発見できました。案内板が増えたわけじゃないですよね?
何事もなく都現美の前にきたら、バスターミナルと噴水の間にベニアのパーテーションが並んでいて工事中の雰囲気。年度末だし、メンテナンス作業でもやっているのかと思いつつ、エントランスへ。このパーテーションは館内にまで続いていました。見通しが悪くて邪魔だなあと思いつつ、チケットを購入。
『解きほぐすとき』は普段見慣れているものを解体して新しく再構築するプロセスを持った作品の展示。金氏徹平、高橋万里子、立花文穂、手塚愛子、彦坂敏昭の各氏が参加。写真があったり、ドローイングがあったり、インスタレーションがあったりと様々でしたが、印象に強く残ったのは手塚愛子の織物工芸品を部分的に解体して別種の織物美術品に仕立てた作品や、彦坂敏昭の加工したデジタル画像からアナログ絵画に転写した輪郭の解体しかかった色彩が乱舞している作品でした。
普段見慣れたものが形を崩して別のものに変容するというのはアニメや特撮では良く見かけますが、現物として見せられるとインパクトがあります。色彩の乱舞のような彦坂敏昭の作品は近づいてまじまじと見つめると何が何やらなんですが引いてみるとオリジナルの画像がぼんやりと見えてくるのが面白かったです。細部を掴もうとすると全体を見失い、全体を把握すると細部は見えなくなる、というのは何やら示唆に富んでいますが、なんとなくそういう掴み方をする作品ではないような気もします。
都現美のレストランでカレーとコーヒーのセットを頼んだら、コーヒーを忘れられたりとか(前回昼食を取ったときもそうなんだけど、担当の人のそれぞれの応対は丁寧だし、料理もおいしいのだけど、全体的にはいまいちな印象が残るのはなんなんだろう)ありましたが、森美へ移動。
森美では『アートは心のためにある:UBSアートコレクションより』が開催中。ウォーホルとか今まで印刷物でしか見たことのないものを目にすることができたし、面白い表現手法を使ったポートレイトとか、中国の経済発展の中で忘れ去られようとしているかつての国営工場を撮ったビデオ作品とかあってよかったのですが、いかんせん六本木ヒルズ。人が多すぎ。その多すぎる中の一人が紛れもない自分なわけですが。
面白いなあと思ったのは「人物集合」をテーマにした絵画が両脇の壁に展示された部屋で、正面に投影されている映像作品を観ようと部屋の中央に並べられた椅子に座るオーディエンスの姿そのものが周囲の絵画を再現していて、これはやっぱりこういう演出を狙っていたんでしょうか。自己言及的というか。
UBSアートコレクションと平行して森美のコレクションも展示されていて、その中でびっしりと立ち並ぶビル群で構成された「箱舟」の絵画があり、その様子は昔夢で見たような気がするというのもの面白かったのですが、その絵画を見た後、スカイビューから東京の景色を見下ろすと感慨深いものがありました。「箱舟」のキャプションには「どこから来て、どこへ行くのだろう」みたいなことが書かれていたのですが、それはそのまま東京の景色と重なるような気がします。