■国立新美術館で毎年企画されている「アーティストファイル」昨年あたりから日韓アーティストのグループ展的な色は見えていたように思うのですが、今年ははっきりと日韓グループ展であることを謳っています。こんな時節柄だから、なのでしょう。作品の中には日韓双方のコラボレーション作品もあり、スタンスは明確なように思います。
会場に入って最初に出迎えられる作品、ヤン・ジョンウクの〈あなたと私の心は誰かの考え〉は紐で連結された3つの木組みの構造物の一部をモーターで駆動して動かす単純な仕掛けですが、作品の中央に白熱球が1つあり、展示室の壁に繊細に動くシルエットが展開されていて、一目見るなり作品に飲まれたように感じました。3つの構造物が互いに関係しながら動き、そのシルエットが投影されている作品そのもののつくりと「あなたと私の心は誰かの考え」というタイトルとの関係は読み取りやすいと思います。互いに影響を与え合いながら自分の心は出来上がっていく。完全に独立している心はないことを示唆しているのでしょう。
この「相互作用」のモチーフは百瀬文さんとイム・フンスンさんによるコラボレーション作品、〈交換日記〉でも見て取ることができます。この作品は互いが撮影して説明抜きでわたしたビデオにナレーションをつけるもので、映像とナレーションの雰囲気は合っているのですが、状況的にマッチしていないことは解ります。その微細な差異が生まれることが近くて遠い関係をよく表しているように思います。
〈交換日記〉におけるビデオとナレーションのミスマッチは小林耕平のダダ的な作品ではより顕著で、というか意図的に作られていて、会話で構成されている作品でありながら微妙なところで会話が成立しないように設計されています。ただ、じっくり見ているのは辛い。ついつい会話を追ってしまうのですが、追ったところで意味がないので。
会話・対話ばかりをテーマにした作品ばかりでもなく、富井大裕さんの彫刻、写真作品や手塚愛子さんの織物を解体し、素材そのものの存在を取り出して見せる作品は以前にも目にしているはずですが見入ってしまいます。好きな作品はキ・スルギさんの写真作品で、特に〈Unfamilier Corner〉シリーズには惹きつけられました。殺風景なビル構内を撮影しているようなのですが、そこに人の気配があるだけでよそよそしさが和らぐ感じがしました。