■新橋-京橋の資生堂からリクシルへのはしご。資生堂ギャラリーのリー・ミンウェイ(李明維)「澄・微」展は記憶・追憶を眼に見える形にしたもので、ただ、あまりにも即物的すぎる感じも。リクシルギャラリーの磯野迪子「LOOKING AT WINDOWS」展は団地やマンションの窓の並ぶ風景を淡々と撮影したビデオ作品。窓が並ぶその光景にどこかほっとするのは、洗濯物が現れたり消えたりするリズムの中に、それぞれの窓の向こうで息づく生活を感じることができるからだろう。
リー・ミンウェイ「澄・微」がテーマにしているのは、追憶や親しい人々への想いをモノに仮託し、配置するインスタレーションで、リボンをかけられた桐箱に思い出の品が納められている構図は解りやすいものの、展示としては物足りない。同様のテーマを似たような手法で表現する作家というと、塩田千春やクリスチャン・ボルタンスキーを個人的には連想し、彼らの作品に比べると、ずいぶん淡白な表現という印象は否めなかった。
リクシルギャラリーの現代美術展は磯野迪子「LOOKING AT WINDOWS」。団地、マンションの窓が並ぶ景色を延々と撮る。人の姿はなく、天候もあまりかわらないのでスチルのようにも見えるのだけど、ずっと観ているとベランダに見える洗濯物の配置パターンが変わる。そこには生活がある。
集合住宅の窓の並びは画一的なライフスタイルの象徴のように思えなくもないけれど、実際にはそれぞれのリズムの中での生活がある。ありふれた平凡な景色の中に、ともすれば埋没してしまうような「生活のサイン」。そのサインを見出す優しい視線にやすらぎを覚える作品でした。
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