■今年のヨコハマトリエンナーレは前回と同じく横浜美術館と新港ピア、Bankartが中心で、周辺プロジェクトとして象の鼻テラスのパラトリエンナーレ、黄金町バザールが開催される。以前は1日で回りきったりもしたのだけど、今回は会場ごとに入場日が記録されていることもあり、のんびりと観て回ることにしました。とりあえず初日は横浜美術館と新港ピア会場。
テーマは「記憶」「忘却」。横浜美術館は入ってすぐに出迎える大型のインスタレーション、「アート・ビン」が目立つけど、これは不要になった美術作品のごみ箱。トリエンナーレのタイトルにレイ・ブラッドベリの「華氏451」を取り込んでいることを考えれば、「アート・ビン」が焚書に相当するものということに思い当たる。会場で最初に展示されるのがジョン・ケージの「4分33秒」の空白の五線譜であったり、あるいは戦争疎開により空っぽになったエルミタージュ美術館を撮影した「noshow」という作品もあり、忘れ去られる美術、あるいはもっと単純に忘却のメカニズムがわれわれの世界の中心にあることを示している。目に見えないものは忘れ去られてしまう。アートディレクターを務めた森村泰昌はその忘れられたものを再発見するのが芸術の力なのだと言う。
前回のトリエンナーレでは横浜美術館のコレクションにあるマグリットの作品を組み合わせて展示したりもしていたけど、今回はそうしたビッグ・ネームは出てこない。記憶・忘却をキーワードに、そのキーワードに対して忠実に作品が選ばれている。地味な感じもするし、会場の広さに対して作品点数が少ないような印象も受けたけど、コーネルの「箱」があったり、比較的近年に制作されたインスタレーション作品があったりして、あまり現代美術にすれていない人に向けられた誠実な展覧会という印象を受けました。
横浜美術館を出てからシャトルバスを使って新港ピアへ。こちらで正直驚いたのは福岡トリエンナーレ(FT)のアーカイブが展示されていたことでした。FTは自分も観ていたので懐かしかった。ちょっと作品の水増し風ではあったけど。
新港ピアを観終わるとだいたい夕方。トリエンナーレや平行展示会場はまだあるけれど、それは次のお楽しみということで。