■文化庁芸術家在外研修の成果発表の場であるDOMANI・明日展が今年も開かれた。いろいろなジャンルの、背景も経緯も様々な作家が介しての展示なので、展示会全体としてはどことなくとりとめがなくなってしまうのは仕方ないこと。でも、今年も印象に残る作品がありました。
印象に残るのは鳥をモチーフにした山口牧子さんの抽象絵画作品。ずっと見ていると羽ばたく鳥の雰囲気が見えてくる。ただ、遠く空に羽ばたく姿ではなく、狭い空間で羽ばたいているよう。閉塞の中での羽ばたきを、無駄と見るか、不屈と見るかで印象は変わるだろうと思う。
安部守さんの彫刻は'Circle'。円筒から構成されるインスタレーションで、円筒の表面には木皮のような質感がある。森の空間をスライスして森ではない場所から眺めているような感覚。普通の森のジオラマの中に入ると、自分が普段見ている世界と同じ時間が流れているように感じるけれど、こうした抽象化された空間の中に入ると、普段の時間の流れから切り離されたような、そんな感じをうっすらと覚える。
児島サコさんのげっ歯類をモチーフにした絵画、映像、彫刻は生々しい生と死が扱われる。荒っぽい描画から伝わるのは力強いバイタリティだ。それこそ直接的に連想したのはブルーハーツ。
横沢典さんの写真は一種のタイムラスプですが、時間・場所を違えて撮影した写真をスライスしたものを並置して一枚の景色を作る。そこには時間や空間を圧縮することで見る側の時空間を断絶させた、その意味で阿部さんの彫刻作品ににた効果があります。
一番異色だったのは津田睦美さんの作品で、どちらかというとルポ、レポートのような印象。太平洋戦争当時、ニューカレドニア界隈に進出した日本人と現地人との間に生まれた子供を1例1例追いかけたもので、その子供の肖像写真と状況のキャプションが付けられている。そこから、比較的ユニークなケースとして生まれた人々の世界線が織りなすタペストリが浮かび上がる。直接的なオブジェクトしての作品があるわけではなく、すでに「そこにある」が見えていなかったものを目の当たりに提示している。