■久しぶりの水戸。一年前の今頃に行くつもりだった水戸芸の企画展は震災で中止になり、半年近くまって「美女採取」そして年も改まり今回の「Power Sources-力が生まれるところ」。スイスの作家、ゲルダ・シュタイナーとヨルク・レンツリンガーの作品。成長、生命をテーマとし、新春という時期、震災から一年目と言う区切り、水戸芸自身もそのパイプオルガンが復旧作業を終え、リスタートを迎えるのにふさわしい企画だと思います。
印象に残ったのは'Nursery'(「苗床」/2012)、'Sweet Little Nothing'(「いとしいなんでもないもの」2012)。成長する結晶を使うのは一つの特徴なのだろうか。'Nursery'は卵や成長する結晶、芽吹くエンジンなど「成長」を連想させるモチーフにあふれる。芽吹くエンジンブロックは大岩オスカールの「夢見る世界」(都現美の企画展タイトル)を思い出しました。ただ、様々なジャンクを組み合わせ、これまで観た事の無い造形を作るタイプの作品で、その手法に既視感があるのは否めません。ただ、その意図は解りますし、この時期、この場所にふさわしい作品だと思います。
もう一つの'Sweet Little Nothing'は小さく、ささやかな、なんでもない断片を、そのオブジェクトが背負う物語を提示する。もうちょっとラベルを丁寧に作ったら良かったのではないかとも思いますが、好きなタイプの作品。言ってしまえばクラフトエヴィング商会の『ないものあります』的な小品の陳列で、その意味ではやはり新味はないのですが好きなタイプの作品。身の回りにある何気ない様々な断片に、その背後にある人々の物語を見せてくれます。その手法の新味さというよりも、それらの小品が水戸という土地を題材にしたサイトスペシフィックな作品であることに意味があるのでしょう。
パワーソース、力の源泉は身の回りにある。そんなメッセージを読み取ることができるように思いました。