■恵比寿の東京都写真美術館は映像祭以来。川内倫子の個展「照度 あめつち 影を見る」の作品展。川内倫子の作品はどこかで観ていると思うのだけど思い出せない。
「Illuminance(照度)」の写真はハイキーで明るく、柔らかい。明るく、優しいモチーフを選んでいるようにも見えるが、中には小鳥の死骸や、熱そうなアスファルトの上に置かれた金魚のつまったビニール袋などが配置され、死を連想させるモチーフも混ざる。単に明るいところだけを見ているわけではなく、明るさの中に生から死に至る営みがある。
映像作品は写真作品とは違った趣で、写真ではひとつひとつが分断されていた視覚が連続している。ストーリーはなく、断片的な映像が次々と流れていくだけなのだけど、1カットが短いためか不思議と飽きない。面白いかというと、別に面白くはなく、淡々と作家が視てきた世界が映し出されるだけなのだけど、そのバリエーションの豊かさには惹かれるものがある。なんだかんだ言って世界は美しいのだけど、その1割も自分は意識して視てはいない。
単に心地よい景色だけを並べているわけでもなく、時折、死を予感させるカットが挟まる。もちろんそれも「あめつち」の理であり、ループ再生される映像作品そのものと同様、繰り返される世界の中にある1つの断片でしかない。
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