■冬の雨の中、葉山へ。桑山忠明展と屋外のTwo Times展。いつもなら海、空、山と色鮮やかな土地だけど、この日はさすがに灰色の中。ただ、桑山忠明展を色彩を失った中で見たのはそれはそれで面白い組み合わせになったのかもしれない。明るいオレンジと緑のカラーが次第に混じっていく。
桑山忠明展はミニマルな彫刻展示で、アノダイズ処理した金属オブジェが整然と配置された室内空間は静謐な空気に満ちていた。展示室を第1室から5室へと進むにつれて、赤と緑に色分けられたオブジェの配置は次第に曖昧になり、最後には1つのオブジェに2つの色が混在する。オブジェへの視度により違う色が見えるように表面加工処理が施されていて、その技術そのものも面白かった。
赤と緑が彩度を下げて曖昧に溶け合っていく様は灰色に沈む葉山の海と空のようでもあった。
Two Times展は屋外展示。金沢二十一世紀美術館のように屋根の上に山を見つめる彫像が一つあり、それと対になる彫像は海岸近くで海を見つめる。茫漠とした自然の領域と、人の手による人工的な領域と、その双方にまたがってヒトという存在はある。そのどちらか一方だけを切り出してもすべてを捉えたことにはならないが、しかし同時に双方を見ることはできない、そんな世界観がそこにはあるようでした。
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