■先日に続いて都写美2回目。今度は恵比寿映像祭。無料。周辺のギャラリーとも連携していたようですが、そちらは場所がわからないので立ち寄りませんでした。ストーリー性のある、いわゆる映画は観なかったのですが、単純に映像で遊んでいるような作品が多くて楽しみました。
展示は3Fから。入ってすぐのマライケ・ファン・ヴァルメルダムはループフィルムの映像作品。3点展示されていましたが、〈カップル〉が面白かったです。小さな湖畔か川岸のベンチに座る老夫婦を背後から引いたポジションから次第に寄って、寄って…ベンチの下をくぐり、二人を正面に捉えつつカメラは上空に上がり、二人の頭上をまわって再び背後に回り…以下繰り返し。1ショットで収めているように見えていて、いろいろ不思議な作品。二人を正面に捉えて後ろに引きつつ上昇し、そのまま頭上を越えて背後に回り、カメラを下げつつ地を這うように二人の背後へ寄っていく、というだけのカットならクレーンを使えばできそうだな、というのはわかる。でも、背後から寄ったカメラがそのままベンチの下をくぐって二人の正面を捉えて上昇する、となると解らない。…やはりクレーンを使っていて、ベンチの下からスタートして、ベンチの下に復帰する軌道を取っているのかな。ただ、見ている間はそのつなぎに気付けず、とても不思議な思いをしていました。
不思議な思いをする映像といえば、ユェン・グァンミンの〈消えゆく風景-通過II〉もちょっと面白かった。引きの映像なのですが、その距離がだいぶあり、道路を越えて部屋を抜けて、家の反対側にカメラが抜けていく。アームにステディカムつけるとかしていると思うのですが、必要なアームの長さとそれを支持する機構の大きさと、それら装置が設置されているであろう場所を考えると、簡単には撮れそうにないなという印象。ただ、その長い引きがもたらす効果を作家はうまく使い、「高速道を移動するカメラ画像」による高速で延々とつづく「寄り」の映像とミックスさせ疾走感へともっていき、高揚する余韻を残して終わります。単純に映像が持つ運動だけでも面白い作品でした。
いわゆるビデオインスタレーション作品も多く展示されていましたが、面白かったのは伊藤隆介の〈オデッサの階段〉。「戦艦ポチョムキン」にある有名なカットからの引用ですが、その映像はターンテーブル上に作られた模型を撮影して作られたリアルタイム映像です。テーブル上には銃を構える兵士の人形なども並び、それら装置が「戦艦ポチョムキン」を抽象化した作品であることがわかります。それと同時に、映し出される「永遠に階段を落ちていく乳母車」の映像が小さな装置の中で作られていることが、この引用元となったプロパガンダ映画の虚構性をよく示してもいます。
もう一つ面白かったのはカロリン・ツニッス&ブラム・スナイダース Sitdの〈RE:〉で、プロジェクターが投影する映像を鏡で反射してプロジェクターに投影することで、一般的な映像作品では黒子的な存在であるプロジェクターを作品自体にしてしまっています。投影される映像も波紋や、ポリゴンモデルを彷彿とさせるようなグリッドであり、一見するとプロジェクターの存在感が消えてしまっているのも見事でした。