■ここのところ元気がなくて寂しいかぎりのICC。エマージェンシーズ!もお休みしていたのだけど、年度末になって復活。企画展「アノニマスライフ」が開催されたので見に行きました。名の知れた作家の作品が多く集まっていたけれど、新作は少なく、その点はやはり少し寂しい。コンセプトは少し違っているようでしたが、数年前に都現美で開催された「トランスフォーム展」と似ている感じがしました。ただ、ジェミロイドが展示されていたのはさすがに美術館とは違う。
「アノニマスライフ」はテクノロジーによって生まれた未分化の生命、独立した生命体として認識されることはないが、生命としての萌芽を予感させるオブジェクトの展示、ということなのだけど、そのものずばりを思わせるのは石黒教授の「ジェミロイド」ぐらいで、他はスプツニ子!の「カラスボット」や「生理マシーン」やオルラン「これが私の身体…、これが私のソフトウェア…」にせよ、身体改造のイメージが強い。身体改造の延長に「ヒト」としての生物学的アイデンティティがゆらぎ、ヒトではない別のものになっていく、というイメージを持つことは可能だけど、それはやはり強引という気がする。
おもしろかったのはやなぎみわの「案内嬢の部屋」シリーズが冒頭を飾っていたことで、確かに「案内嬢」は生身の身体をもつ女性ではなく≪案内嬢≫という特殊な存在として描かれているのだけど、その案内嬢を「アノニマス・ライフ」として扱ってしまうのは開き直りというか、意味が違ってしまうようにも思う。
石黒浩「米朝アンドロイド」は機械仕掛けの米朝の展示で、生きているかのように動き続けるのだけど、残念ながら生きているようには見えない。アクチュエーターが持つ機械的動作が制限となって、生物的には見えない。ただ「不気味の谷」は超えているように見えたのは面白かった。もっとも見る側も慣れてしまっているのかもしれない。