■先日見にいった東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」の帰り、ナディッフを冷やかしていて見つけた本。『たのしい写真』著者はホンマタカシ。「よい子のための写真教室」と副題があって、どことなく人を喰った系の予感がしたのだけど読んでみたら全然普通に面白かった。少なくとも写真・カメラ雑誌なんかより全然勉強になるし、読み物として十二分に面白い。
『たのしい写真』の中でホンマタカシは写真の歴史をざっと見返し、「写真」にまつわる一般に広まっている誤解──「写真は真実を写し撮る」を解体する。写真は「絵作り」の1手法なのだ。ただ、写真という技術はその特性上、レンズの前にある景色が実在していた、という事実からは逃れられない。そのことが写真に真実/虚構の曖昧さを持たせることになる。写真として写し取られた景色があったことは事実。だが、その景色から想起される「真実」は写真を前にした者の中に生まれた物語でしかない。
本書の中でホンマタカシが惜しみなく明かしている「秘密」は「ニュー・ドキュメンタリー」の中でも十分に見て取れるのだけど、種明かしをされているからといって、簡単に真似できるかといえば、そんなことはない。自分が気に入った写真と同じように撮影してみよう、というワークショップの難しさ(そしてその難しさは自分が撮った写真で嫌というほど思い知らされている)から解る。でも、「写真とは」といったテーマ論や「こう撮れ」といった商業写真的な技術論から離れたワークショップは読むだけでも楽しい。そこに写真家の方法論が読み取れることもあるけれど、そこで扱われている手法が自分でもなんとなくできそうな気になれるから。
写真は真実を写し撮るものではない。ただ、そのとき目の前にあるものを写しているだけ。それは間接的に世界を知覚していることの意味を改めて突きつけているように思う。