■実は先週書いた横浜美術館で開催された高峯格の「とおくてみえない」展の前にBankart NYKに立ち寄って女子美術大学の学部卒展「グラセラミック」を観ていた。もう終わってしまっているけど、幾つか書き残しておこうと思う。
グラセラミック展はガラス・陶器工芸に特化した展示。昨年は確かテキスタイルの展示も併せてあったように思うけど、今年はテキスタイルは別の会場となったらしい。そのためか、展示は2F全体フロアを使っていたのだけど、少し閑散とした雰囲気がありました。
作品のしつらえとしては既存作品から影響を受けているようなフォルムを持ったものもあり、全体的にどことなく「つたない」印象を感じました。作家性のようなアクの強さはありませんでした。
ただ、その一方で個々の個性、多様性をテーマにした作品が数点あるのは興味を引きました。色、形にバリエーションを持たせたマグカップを並べた「Cupたち」、花瓶のようなフォルムで着色にバリエーション持たせた「イッシュタヨウ」など。ただそれぞれフォルムそのもの、彩色のパターンに特筆すべき点はなく、いじわるな見方をすれば苦し紛れではないのかという言い方もできるとは思います。
ただ、その個性のあり方、バリエーションの振れ方が小さい、言ってしまえば大同小異の中に収まってしまうというのは彼らの世代の特徴になってしまうのでしょうか。
もっとも、展示会全体としては、個々の作品同士に似通ったものは無く、それは無用の心配なのだろうとは思います(ただ、先行作品のフォルムを連想してしまうという意味での個性の弱さは気になりますが)。作品として面白かったのは「繋がり合うもの」「Eros」「Long Standing」「Cupたち」になるでしょうか。特に「Eros」は、これもまた確かに観たことがあるような無いようなという印象はあるのですが、生物的な艶めかしさを持つ作品で面白かったです。「繋がり合うもの」はガラスの固まりを幾つも連結して円環状とした作品で作品下面に仕込まれた光源の光を反射して輝いていました。近づいた時に目に入るデイテールが細かく施されているとなお綺麗だったと思います。
「Long Standing」は遠目にはガラスに見えなかったのですが、寄るとガラスの粉が吹き付けられた表面がわかります。見せ方で少し損していたかもしれません。
全体的にはやはり「つたない」という印象となってしまうのですが、学生さんのグループ展で時折覚える何とも言えない「やるせなさ」といったものはなく、むしろ癒し系ではありました。ガラス細工のワークショップもあって面白そうだったのですが、指導側が女子大生二名に、こちらがおっさん一名、しかも作るのはガラスアクセという図は客観的にどう考えてもぞっとしないものだったので、断念しました。
……気にせず何か作っておけばよかったかな。