■水戸に再び。こないだ大洗で買ったイカの一夜漬けに味をしめたこともあって、ついでに大洗に寄る予定で。水戸芸術館では「ジョン・ヨンドゥ 地上の道のように」。前回行った茨城近代美術館も近代美術をフィーチャーしていたのだけどコレクション展のようだったので、今回は見送り。水戸芸、茨城近美、大洗だと一泊二日でないと難しい。
ジョン・ヨンドゥは映像を素材にしたメディア・アート/インスタレーションが中心で、以前に国内のほかの企画展でも見覚えがある作品がありました。さまざまな人の夢をかなえた状態を現実の当人と二重写しにする「奥様は魔女」は横浜トリエンナーレ2014で公開されていたし、「ドライブ・イン・シアター」は川崎市民ミュージアムで見覚えがあるのだけど、制作年度が合わないからこれは別の人の作品と混同しているかな。
面白かったのはB cameraシリーズで、幾つかの映画の一画面を再現しているのだけど、B-Camera、つまり撮影場面を別のアングルから撮ったスチルでその舞台裏を露呈させている。現実の撮影と写真の書割りを合成して撮影されていて、写真が写している「真実」が何か曖昧になっていることを見せつける。写真が真実を写していることに間違いはないが、それを観る側の解釈が真実と合致しているかどうかは解らない。ジョン・ヨンドゥの作品が巧妙なのは、単に一画面を模倣しているのではなく、撮影のロケーションを映画のシーンに沿った形で選びつつ、チープな形で場面を再現して作り物であることを強調していることだろう。写真の書割も生身のモデルも写真で撮りなおされることで同一の平面画像に畳み込まれてしまう。写真は確かに真実を写しているが、それは観る側の思い込みによってゆがめられてしまい、真実を伝えることができない。観る側は写真を観ているのではなく、自身が持つ記憶されたイメージをリファレンスとして再解釈するメカニズムを使っていることが解る。
インスタレーション作品として、Oculus Riftを使ったVR作品があり、東日本大震災からインスパイアされた荒廃して景色をVRの中の清浄な景色で上書きするもので、タイトルを「ブラインド・パースペクティブ」といいます。タイトルから意図するものが原発事故に対する印象操作を批判的に扱ったものであることは想像がつくのですが、その視座の持ち方がずさんで感心しませんでした。3.11直後に原発事故を直接扱った作品が幾つも登場したのですが、いずれも事故の印象だけをフィーチャして、事故そのものを捉えているものは皆無と言ってよく、「ブラインド・パースペクティブ」もその類を免れていません。作者自身が「B-Camera」シリーズを製作しているだけにこれは皮肉なことです。
それはそれとしてOculus Riftは両眼に映像を投影して立体視させるものですが、私自身は斜視があるため両眼のパララックスが平行しておらず、Oculus Riftでも立体視はできませんでした。ふつうの平面CGを観ているという印象は変わらず、その距離感がこの作品に没入できなかった一因だったかもしれません。
水戸芸を見終えて大洗へ。ゆらっくす健康館で大きなエビフライ定食を食べてまいわい市場で目当てのイカの一夜漬けを買って水戸にとんぼ返りとなりました。9月に大洗をぐるっと回ったばかりであまり観るところがなく、ちょっと中途半端な感じでした。腰を落ち着けるところがあればいいのですが、今はまだ探しあぐねている感じ。喫茶店とかあればなあと思うのですが、ちょっと違うんですよね。