■目黒区美術館での「未来の記憶」展。目黒区美術館は久しぶりな気がする。目黒駅から坂道を下り、目黒川沿いの美術館へ。梅雨入り寸前という頃で、川沿いの緑は鮮やか。
「未来の記憶」は現在大分大学教授の佐脇健一さんの個展。産業遺構、にもなっていない、戦後の比較的新しい、かつて工業施設だったもの、がある風景を題材に写真や彫像作品を制作されている。
たんなるノスタルジアや、いわゆる「廃墟好き」というのとも違うようだけど…そうでもないかな。工業プラントは機能的要請からくる構造がそのまま表に現れていて、そこに機能美や力強さを見出すこともできると思う。展示の中心となっているのは'Landmark'シリーズで、工業施設を思わせる造形物が台地に配置されている。
その造形物はピラミッドのようにも見え、作品によっては台地を掘り下げてその姿が現れてきたように見えるものもあり、「遺跡」として見立てずにはいられない。
つい最近まで、歩いて数分の場所に工業プラントが広がる土地で暮らしていたということもあって、そしてそのプラント群も今は縮小期に入り、後背地の町も縮小していく姿を見ていたこともあり、その「遺跡」化している工業施設の姿はかつて隆盛を誇ってきた産業の墓標のようだ。
かつてはとにかく作れば売れた時代があったわけだけど(中国は今もそんな感じだけど)、そうした価値観で横溢していた時代を遠く離れて眺めているように感じる。作品の中にはF4ファントムや最近の無人偵察機「プレデター」をモチーフにした作品もある。赤く錆びたプレデターの先には茫漠とした砂漠が広がる。プレデターが象徴するその価値観も結局は何も残さない(そして、砂漠の砂のように漂白されて無害化されている)。遠く未来から現在を振り返った時の記憶、それが「未来の記憶」が意味するところなのでしょう。