■今年(2008年)の7月から9月にかけ、豊田市美術館(TMMA)で'Blooming ブラジル-日本 きみのいるところ'展が開催されていた。なんでも今年はブラジル移民100周年にあたるそうで、いろいろと気合が入っているようだ。10月から'09/1月まで東京都現代美術館(MOT)で開催される'ネオ・トロピカリア|ブラジルの創造力'もその一環の企画で、たまたまTMMAのBloomingを観ていた自分にとってはブラジル現代美術展Ver2.0みたいな感じがします。
TMMAの'Blooming'を見に行った時の体験記はこちら。
TMMAの展示では展示用のブースの壁をいっぱいに使った大きなドローイングとか、美術館前の池に工業製品的な蓮を浮かべた作品とか、大きく伸び伸びした雰囲気がいっぱいだったのですが、MOTの方は普通と言えば普通の展示で雰囲気はだいぶ違いました。ただ、参加アーティストの数がMTTAとMOTではMOTの方が圧倒的に多いです。展示会場の雰囲気としては「ネオ・トロピカリア」と平行開催された「森山大道/ミゲル・リオ=フランコ写真展」の展示方式がTMMAに少し似ていました。
なんというか、MOTでの雰囲気はずいぶんおとなしくなってしまった感じがします。
豊美でも拝見したアーティストさんと被っているものは当然あって、エルネスト・トト、マレッペ、アナ・マリア・タヴァレスのお三方。島袋さんも実は被っているんですが、それはMOTの常設展示の方。
TMMAでチューリップをうつぶせにしたようなちょっとなまめかしいインスタレーションを展示したトトさんはMOTで一番でかいアトリウムを使ったオープンスペース形式のインスタレーションでした。この人の作る空間は生っぽい感じがする人工構造物で好きです。これまたTMMAではビーチにばかでかいビーチボールを放り込んで生じた大騒ぎのビデオ映像展示がメインだったマレッペさんはこちらでは他にインスタレーションとか普通のスカルプチャとかありました。この人の作品ってたぶん「おもしろたのしい」要素がどっかにあると思うのですが、MOTではあんまりおもしろたのしい雰囲気が伝わってこなくて残念でした。伝わってこなかったのは、展示を見る前に講演会に2時間出席して疲れてしまっていたからかもしれませんが。
逆にはまっていたのがアナ・マリア・タヴァレスのビデオ展示で、TMMAのアーティストトークでこの人はとてもクレバーで理知的な部分を先行させているような印象を受けたのですが、MOTでの展示もずいぶんクールで硬い印象で、妙にしっくりきていました。
MOTで初見となったアーティストさんの作品で印象に残ったのはルイ・オオタケのエリア再生プロジェクト。単にスラム街のファサードを住人の好みの色で塗り上げるだけと言えばそれだけなんですが、その仕上がりがとてもサンバなカラフルさで、カラーコピーのCFに使われそうなビジュアル。日本でああいうアプローチはまずとらないだろうなあ。
リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダーの食材を使ったミニチュア構築物の写真はちょっとかわいい。被写界深度の浅いミニチュア写真風味。リジア・パペの光の柱は荘厳でした。
ただ、どうしてもTMMAで感じた多少のエキゾチック風味というのはあまり感じるとれることができなくて、ちょっと残念でした。もっと余裕を持って見に行かないと駄目ですね。ただ、異国から来た風味というのは、平行展示の「森山大道/ミゲル・リオ=フランコ写真展」のアーティスト・トークで感じることができたのでそれはそれで良かったです。