■久しぶりの六本木。森美術館のネイチャー・センス展。「日本の自然知覚力を考える3人のインスタレーション」とのことで、吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆の3人展となる。六本木ヒルズで「ネイチャー」というのがすでに何か意味深な感じがする。気になるのはなんだか展示作品があまり多くなさそうなことで、少し警戒しながらも観に行った。
六本木ヒルズという施設そのものが人工環境そのもので、その最上階に収まっている森美術館ほど「ネイチャー」から程遠い場所もないだろう。そこで「ネイチャー・センス」と言われても、というのは正直な感想。
案の定、いつもの企画展に比べると密度が低く、するっと見終わってしまう。吉岡の作品はアートというよりも21_21あたりが適当な感じもする、プロダクト・デザイン展示という感じ。

面白かったのは篠田太郎で、一番らしい、と言えばらしい作品。「残響」はディスネイチャー。ネイチャーというより、ユニバースという雰囲気ただよう「銀河」は大きなプールに定期的に水滴が落ちて波紋が広がる。水ではなく、水よりも比重の重い液体を使っているようで、波紋はすぐに消え表面はすぐに鏡のようになる。何もない場所に、突然現れて消える波紋は宇宙論的なユニバースの生成をイメージさせるスケールの大きな作品。違う意味で面白かったのは、オーディエンスが天井に吊るされた水滴を落とす装置の列に目が奪われていたことで、観るべきものが違っている。ただ、見た目にディテールが豊かなのは天井の装置であるのも確かで、もう少し展示の仕方に工夫があっても良かったように思う。



栗林の「ヴァルト・アウス・ヴァルト」は雪の積もった林のランドスケープを見せるのだけど、十和田市現代美術館で観たマリール・ノイデッカーの「闇というもの」の方がずっとネイチャー・センスを感じさせてくれた。栗林の「ヴァルト…」が見せるネイチャーの存在感があまりにも希薄で、その意味でヒルズの最上階にふさわしい展示かもしれない。ただ、あまり面白くないというのも正直感じた。
同時展示されているプロジェクトNは「トロマラマ」のビデオ作品。身の回りにあるもの、ボタンや版画、食器をコマドリしたアニメーション作品で、こちらは観ていて楽しい。日本初個展とあったのだけど、広島市現代美術館でもトロマラマは観ている。ただ、あの時は確かに個展というか、単品上映だったから個展とは呼ばないのかな。
とりあえず今回森美はちょっと低調。次回の小谷元彦展に期待しよう。