■半年振りの原美はダイムラー・ファウンデーション・ジャパンによる「アート・スコープ」の企画展「インヴィジブル・メモリーズ」。アーティストの日独若手作家交換プログラムの成果発表というもの。参加作家はエヴァ・ベレンデス、ヤン・シャレルマン、小泉明郎、佐伯洋江の4名。面白かったのはヤン・シャレルマンと佐伯洋江の作品かな。
エヴァ・ベレンデスは色彩の形状のコンポジション。布を使われていましたが、フロアに置かれたパンチングメタルなどを使った硬い作品が良い雰囲気を出していました。先日見たモホイ=ナジ展での作品にも少し似ていて、おとなしい感じがしました。
ヤン・シャレルマンはスタイロフォームを主な構造材料に使いながら、表面塗装に工夫して違う素材を扱っているように見せてしまう。素材と表面の質感の違いから、そこで空間が断絶しているように見えなくもない。でも2Fにあった錆びた鉄骨材にみえる作品の方がやはり室内空間を異化したようで面白かった。変哲もないフローリングの部屋に忽然とそこに普通ならあり得ないものが存在することによる初見の衝撃はやはり面白い体験だと思う。
佐伯洋江の作品はシャープペンシルを使って描かれた端整な作品。極端に様式化された意匠と構図、グレーの階調で描かれた画面は、派手さは無いにしても見ていて落ち着く。細く最小限の描線だけで描かれていても、繊細さや不安定さはなく、力強く安定した印象が残る。少し離れてみるとすぐにディテールが見分けられなくなりそうなほどに細い線なのだけど、絵から伝わってくるものは力強い。描かれるモチーフがどことなく少女趣味のような気がしなくもないのですが、描かれている「かわいい」ものと伝わってくるものにギャップがあって、それが印象を強くしているように思いました。
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