■さわひらき、の名前は自分のような人間でも聞き覚えがあって、最近だと資生堂ギャラリーでのLineament展が記憶に新しい。詩的で、内省的な映像を制作する作家という印象があって、かといってただ端正なだけでなく少しユーモラスな要素もあって、ハラハラドキドキはしないけど、見ていると静かに楽しんでいることに気が付く。
kanakengallery - さわひらき Whirl
神奈川県民ホールギャラリーで展示された今回のWhirl展でもその印象は変わらず、ただ、屋外の実写がLineament展の時よりずっと多く、そのことは少し意外な感じがしました。もっとも、観終えてみればLineamentは新しい試みをしていたことが解ります。
映像に説明が付くことは少なく('Lineament'にはあったけど)、単純に映像の遊びを楽しんだり、語られない物語を想像してみたり、あるいは作家の心象風景を想像してみたり。しかし、所詮それらは観る側の内面以上のものにはならない。それでも、あれこれ想像させられるのは楽しい。
「あれこれ想像」という意味で面白かったのは'Out of blue'で、小鳥のモチーフが多用されていることから「青い鳥」が下敷きに使われていることは確かだろうと思う。「青い鳥」は幸福のシンボルとして扱われているが、鳥自身にとってみれば籠の鳥になることは必ずしも幸せなことではないだろう。籠の外は危険な世界ではあるが、その中に羽ばたくことが鳥自身の幸福だろう。
展覧会のタイトルにもなった'Whirl'は屋内をカメラがパンしていく。360度のパノラマを収めているのかと思いきや、映像は延々と変わり続け、ある室内の中でパノラマ撮影しているわけではないことに気が付く。カメラは固定されていると思いきや、実際には室内の異なる場所で回転撮影された映像を巧みにつなぎ合わせ、現実にはあり得ないパノラマを展開してみせます。