■年度が改まって最初の資生堂ギャラリーは「椿会展」 今年から第七次椿会がスタートするそうで、そのメンバーは赤瀬川源平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子とメジャーな名前が並んでる。でも個人的には内藤礼の名前が一番重いかな。今回の展覧会はこの第5次椿会メンバーが一堂に会する最初のグループ展ということで「初心」。
目当てにしていた内藤礼のミニマルな作品はもちろん良くて、今回はドローイング作品の「color beginning」が印象に残る。パッと見は白一色なのだけど、近づいてみると暖かい色が生まれようとしている。それは目覚めの時の感覚とも似ているし、もしかしたらこの世に生れ落ちてくる時の感覚かもしれない。資生堂ギャラリーは1F公道に面した壁の中にも小さな飾り窓があって、ここにも内藤礼作品(「無題」)が展示されている。水で満たされたガラス瓶に生けられた一輪のバラ。それは世に生を受けたことへの祝福であり、『すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している』(神奈川県立近代美術館/2009)と同じく命ある存在へのやさしい眼差しを感じる。
伊藤存の刺繍作品は、過去何度か目にしているけど、今回初めて腑に落ちるようになった。作品が変わったようには見えなかったので、自分の方に受け皿のようなものができてきたのだと思う。ノイズの中に景色が浮かび上がって見えるような感覚があった。具体的に見える風景ではなく、自分の中に「見えているように感じる景色」が出来上がっていく感覚で、それが遠くにある、あるいは過去か未来か、遠く時間を経た景色を幻視しているような気にさせられる。
赤瀬川源平の「ハグ2」も面白かった。既製品の木製家具を購入して、その表面を「剥ぐ」した作品で、荒々しい木地が露出している。その木地がむき出しになった椅子は、座り心地もよさそうで、「hug」されているように感じるのだろうなと想像できる。きれいに化粧された流通製品に隠された本質を暴き出しているわけですね。実際に触れたら良かったのですが、さすがにそれは無理で、ちょっと残念。