■資生堂ギャラリーの新しい展示は【目】による「たよりない現実、この世界の在りか」。資生堂ギャラリーの施設全体を使った大規模なインスタレーションで、最初行ったらギャラリーへ降りる階段がなくなり、「非常口」になっていて面喰いました。
思わずエレベーターを探したのですが、よくみると案内板があって、「非常口」から降りろとあります。てっきりギャラリー移転の案内かと思って良く読まなかったのでした。非常口をくぐると工事現場のようなあつらえで、階段が下へ続いていきます。ギャラリーへの通路の内側に「工事現場」のような艤装をほどこしてそれっぽくしているのでした。
階段を降り切ると扉がもう一つあり、そこをくぐるとその先はホテルになっていました。
こんな感じの夢を昔みたこともあり、この仕掛けは楽しめました。ギャラリー全体をインスタレーションにした大がかりな作品で、荒れた工事現場の空間と整ったホテルの空間をつなげた演出はちょっとした失見当識を引き起こします。
作品を手がけたのは現代芸術活動チーム目【め】。2013年の瀬戸内国際芸術祭でも作品を公開していたそうで、それは観ておきたかった。空間を異化する作品で、元のギャラリーの空間を知っているとそれだけ驚きもひとしお。このホテル空間そのものにも仕掛けがあるのですが、残念なことにそちらは今一つ。偽物の空間であることはすでに解ったうえで中に滞在しているということもあるのですが、光量が足らなくて肝心の仕掛けが見えないということもあります。
この作品がもたらす驚きは、「うまく騙す/気持ちよく騙される」ところにあると思うのですが、観ている側は何かあるだろうと思って観ているわけで、その予測の上を行くのは難しかっただろうと思います。
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