■その美術館は富山県の入善町にあるという。というか、あるんですが、例によってカルチャーパワーのサイトで知って以来、一度は訪れたいとかねがね思っていた美術館。古い発電所の建物の中を改装して大型の展示室に使っている。内部空間は発電所のままだから、無骨な倉庫みたいなところで、奥にはタービンが置いてあったりする。場所の味付けが濃い空間だから、作品そのものの味と空間が持つ味があいまって独特の雰囲気が生まれるに違いない。
金沢から富山へはくたか7号で移動して、富山駅で一旦荷物をコインロッカーに預けたり、お昼の弁当を買い込んだりしてから、糸魚川行き普通電車に乗って50分ほどの入善駅で下車。発電所美術館方面へはバスが出てはいるのだけど、本数が少ないので往復をバスにすると現地の滞在時間がだいぶかかる。今回は行きはタクシーで。1980円でした。
現地は雨。行ってみたらその日は制作公開期間ということで無料でした。作品としては見れなかったわけですが、無料だったので、それは良かったと思うべきか。ちゃんと調べていればそうなっていることは解ったはずなんですけどね。
制作されていたのはヤノベケンジの「MYTHOS」。ヤノベケンジ流、世界創生神話の舞台構築だけど、一つの作品としてフィックスしたものではなく、作品そのものが期間中作りかえられる。その作り変えの期間は無料公開。自分が立ち会ったのは「第一章」。創生のとばくちの場面のよう。ひっくりかえった亀が天井から吊るされて、その下の池ではヘルメットをかぶった2匹の猫が見上げている。亀の真下には星があって、そのさらに下には柱。
制作過程は、まあ、ぱっと見は大工仕事のような感じです。スモークを出す仕掛けがあったり、アナウンスが流れたり。帰りのバスにだいぶ時間があったので、中二階にある小さなラウンジで感想ノートを読んだり、フライヤーを調べたりしていたら呼ばれました。なんか、動くところが見れるということで。
館内のメイン照明は落とされていて、スモークが流され、何か重たい、舞台のような雰囲気。そうこうするうちに「電子機器はダメージを受ける可能性があるから止めるように」といったアナウンスの後「起動します」と。唯一の照明になっていた作品を取り巻くように配置された白熱球のパワーも落とされ、しばらくした後、突如雷光と轟音。テスラコイルからの放電が柱と亀の間に走る。その雷光は数回繰り返され、轟音が耳を聾す。
発電所で放電というのはベタだけど、発電所のタービンから直接引いているわけはない。でもイメージとしてはぴったり。期間中4回変更が入るそうで、となると4回来たいところではあるけれど、やはり移動コストはいかんともしがたい。
帰りはバスで。歩きながら美術館を見返すと、梅雨時の青々とした稲田の向こうに赤いレンガ造の建物が慎ましく佇んでいました。ここは掛け値無く素敵なところです。これでもう少し通いやすかったら良いのだけど。金沢、富山のセットは魅力的だけど、移動コストの高さはどうにもならず。富山駅をベースキャンプにして金沢、入善と移動するのが良いことは解るけど、空路は経済的につらいし、深夜高速バスでは行きはともかく帰りが難しい。鉄路は直通が無い。結局、3日を見込まないと難しい。新潟あたりに何かあるといいのになあ、とか思ったりもする。
でも、また機会があれば来たい所です。できれば雨天以外で。