■上野の東京都美術館は初めて。同時にルーブル展も開催されていたのだけど、そちらはパスして福田美蘭展に。福田美蘭はグラフィックデザイナーの福田繁雄の娘。福田繁雄のイラストはだまし絵のように遊び心があって面白かったけど、その心は福田美蘭にも引き継がれているように思う。
洋画、日本画、西洋絵画などそれぞれの様式を使い分け、自在に組み合わせたり、行き来したりして福田美蘭の作品にも遊び心にあふれる。そのスタイルは、例えば現代に風景を日本画の様式で描く山口晃と通じるものがあるようにも思うけど、福田美蘭の場合は使いこなし方のバリエーションが幅広い。様式を混乱させるその幅広さはずっと広いと思うのだけど、その一方でなんだかどこか野暮ったい感じも残っている。その感覚は「ゆっくり東京女子マラソン」(干刈あがた)に描かれた日本女子マラソン選手の描写に通じるようにも思う。
またその一方で、ニューヨーク世界貿易センタービルへのテロを題材とした作品や、先日の東日本大震災を題材とした作品など、アクチュアルな現実への目線も明確に出した作品もあり、その意味でしっかりと地に足がついていることも感じさせる。ドメスティックさを失わない目線と、決してポップではない(どちらかというと昭和的なモチーフの選び方を感じる)処理が「ゆっくり東京女子マラソン」的な感覚につながっているのかもしれない。
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