■札幌から帰ってすぐに今度は水戸へ。水戸芸術館で始まった鈴木康広展のビジュアルが面白そうだったことと、茨城県立近代美術館の「芸術の冒険」が同美術館では珍しく現代美術を扱っていたので。ただ、「芸術の冒険」は数年前に観たような覚えがあるのですが、同じタイトルの別の展示だったかもしれません。扱われているのが国立国際のコレクションなのでそちらは確実に観ていることもあり、そこで混同しているのかもしれません。
水戸芸術館の「近所の地球」は瀬戸内国際芸術祭の「ファスナー船」で知った鈴木康広の個展。「近所の地球」は地球環境を扱った作品で、「水」「空気」のモチーフが多用されている。他に視点を変化させることで見え方が変わることを端的に示す小品が多い。特に面白かったのは「上」という字形を(金太郎飴的にひきのばして)リング状にし反転させると「下」という字形になることを示すものとか、もちろん既知の事柄なのですが、その知識を具体的なモノとして見せられると楽しくなります。
「大きな空気の人」は要するに風船で、空気を共有していることを端的に示したり、あるいは透明な被膜で区切るだけでそこに空気の存在を意識させたりする作品でした。見かけは軽快なのですが、そこから読み取れるものは必ずしも軽くはないように思います。ただ、その「軽快」さは自然にめぐまれた日本の風土というコンテキストの中で通用するものであるのも確かです。公園にある蛇口をひねると飲用可能な水が迸る環境、というのはグローバルなものではありません。
水戸芸を後にして水戸駅の反対側、茨城県立近代美術館へ。「美術の冒険」は大阪の国立国際美術館のコレクション巡回展ですが、タイトルの意味は現代美術のカテゴリに含まれる作品が試みてきたさまざまな方法論を俯瞰することを指し示しています。「現代美術」としてくくられる作品の発生から現在に至るバリエーションの展開を追いかけています。その大半が以前に観たことのある作品なのですが、今回改めて観ると違った解釈や発見があって良かったです。違った見方ができる、というのはもちろん作品に変化があったわけでも、展示会場に影響されたわけでもなく、自分の側に変化があったためです。いくばくかの成長があったということなのでしょう。