■国立新美術館の企画展で、ビックタイトルとしてリヒテンシュタイン展が控えているけど、そちらは行かずに「与えられた形象―辰野登恵子/柴田敏雄」展。辰野登恵子も柴田敏雄も別々に展覧会で目にしたことはあって、ただ、辰野はドローイングや版画、柴田は写真なので今回のように二人展というのはずいぶん意外な感じがしたのですが、お二人の作品を並べてみると造形のフォルムが似ています。いわれてみれば。示し合わせたわけではないでしょうけど、なんとなく似ている。
辰野さんの作品は比較的最近のものしか知らなかったので、学生時代の頃からフォローした回顧展のような形式は、描かれるモチーフや技法の変化がフォローできて面白かった。若いころにモチーフが固まって、あとはその表現を洗練させていくタイプの回顧展を見たこともあったのですが、辰野さんは描くモチーフも変わっていくし、塗り方も変わっていく。作家の中で何か完成形を持って、まだそこに至っていないのか、それとも次々と次の山を目指しているのか、いつも新しい挑戦を続けられているようです。
柴田さんの自然の中に置かれた人工的なランドスケープをモチーフとした写真は、自然と人工建造物のコントラストも面白いし、構図として好きなのですが、辰野さんの絵画と並べてみると、人工物が持つフォルムが辰野さんの抽象画と似ていて、柴田さんは現実の中にあるフォルムを探して山奥に入っていったのかなと思えました。求めるフォルムを自分の中から掘り出している辰野さんと現実の中から探し出す柴田さん、という対比は研究職と技術職との対比とも似ているような感じがして面白かったです。
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