■3年前の横浜トリエンナーレの記憶はまだ新しく、何かと興奮したことを覚えている。その記憶があったので楽しみにしていたのだけど、正直、なんとなくこじんまりとしているような印象は拭いきれない。主催者団体が事業仕分けで外れてしまったということもあったそうで、ただ、前回疑問に感じていた横浜美術館との連携というのは、今度は実現されている。と、いうより、横浜美術館の特別企画展のような趣があった。
面白かったのは大宰府でも目にしていたライアン・ガンダー。新作ではなく、過去の作品の展示という形になっていたけど、見た目の質の高さは確かにあったと思う。作品がそこにあるだけで空間の質が変わる、何か新鮮な空気があるように感じる、そうした作品だと思う。
ライアン・ガンダーに限らず、ほかの出展作家の作品も殆どが過去の作品を場所を換えアレンジしての再展示だった。
杉本博司は丸亀町猪熊源一郎美術館でつい春先まで展示していた作品のシンボリックな数点だけを選んでの展示。片隅に展示されていたビョルン・ダーレムは瀬戸内国際芸術祭で目にしている。「Our Magic Hour」というテーマに沿ってはいるけど、新味はあまりない感じでそこが少し残念。3年前の自分のように、過去に見てきたという履歴がなければまた違った印象を持てたのかもしれない。
面白かったのはルネ・マグリットやマン=レイといった横浜美術館のコレクション作品も混じっていることで、そういう点では「現代美術」の展示会とは少し違っているのだと思う。しかし、過去の作品が並置して展示されることで、「現代」の作品が過去から連綿と作られてきたイメージの連鎖の中にある、単なる継子ではないことを良く示しているようで面白かった。それにもちろん、「美術展」であるのだから、時代によって展示のえり好みをすることがおかしいと言えばおかしい。こうした新旧作品の並置はハラミュージアムアークでも見てきたけど、これからもっと増えてくるのではないかと思う。自分のように美術史の素養がないままにでたらめに展覧会を見続けている者としては、過去からの体系の中で見ることができて面白い。そうした展示方法が一般的になる契機となる展覧会なのかもしれない。