■オペラシティアートギャラリーも1月に入って展示会も模様替え。企画は「難波田史男の15年」、収蔵作品展は「『私』を知るための問い」、プロジェクトNは佐藤 翠。難波田史男は60年代~70年代前半にかけて作品を多く発表していたが若くして事故で亡くなっている。抽象画・線描画が中心。何かで見た覚えがあるような気がする。
展示は難波田史男が学生の頃に描いていた習作からはじまり、次第にスタイルを完成させていく過程を追う。造形的なフォルムのベースはほぼ一貫していることが見てとれるが、それをドローイングするスタイルが若い時に大きく変わる。スタイルの変遷は人それぞれのパスを持つのだろうけど、難波田史男の変化は劇的で、印象的だ。一旦、子供の落書きのようなスタイルになったあと、線描のスタイルを確立していく。それも初期の頃はモチーフも描画もどこか神経質だったものが次第に柔らかなものへ変わっていく。それは円熟の過程だったのか、あるいは自己再生産の袋小路へ向かっていたのか、はたまた新しいスタイルの確立へ向かう途中だったのか、それは今ではわからない。ただ、その可能性が失われたことが惜しまれる。
収蔵作品展は毎年のように新春モード。印象に残ったのは野本穣の空想された風景のすがすがしさと奥山民枝の内から溢れる光に満ちた光景。新しく進み始めるように道を示されたような感じがした。他にも智内兄助の大型の日本画「天象:橋懸り(秋草)」の冴えた少女の目線は忘れがたい。「橋懸り」とは能舞台で役者の待ち場と舞台を結ぶ渡りのこと。天象とは天文現象のことだから、移り変わる季節を捉えたもの、ということか。ここも新しく始まる場を感じる。
新人を特集するプロジェクトNは佐藤翠。一般的にはキャンバスとして、むしろその素材を意識しないよう隠されてしまう存在をむしろ表に出し、布が持つ物性を生かした作品を作っている。一見すると絨毯のようにも見えて面白い。明るい、暖かい色が中心で、どうやらこれは〈冬物〉の色彩らしい。テキスタイル以上に布製品のような属性を持った、そういう意味では単純な絵画というわけでもなく、インスタレーションのような作品なのかもしれない。