■あいちトリエンナーレ2013がはじまった。今回で2回目。前回の2010の時も観て回っていて、今年も休みに合わせて名古屋に行った。前回と同様分散会場構成だけど、今回は名古屋市内を離れて岡崎にも会場が設定された。東岡崎駅は名古屋駅から名鉄特急で30分ほどの土地で、会場はさらに駅から徒歩15分程度の場所になる。ただ「なごやトリエンナーレ」ではないのだし、そういうものでいいのかもしれない。第一、岡崎会場は面白かった。
後述するけれど、今回長者町エリアの展示が縮小していて、前回長者町エリアで共通していた町おこし的なコンセプトは東岡崎へ移されていたように思う。東岡崎の松本町会場でそれが顕著で、青木野枝の円をモチーフにした作品は美容室として使われていた店舗を利用して作られている。
青木の作品から感じるのはかつてここにあったものを慈しむ目だ。この円のモチーフは瀬戸内国際芸術祭の会場でも観ている。鉄という硬いイメージをもつ素材にやさしさを感じるのは意外な感じもする。鉄は表面が酸化して錆びれてしまうが、その古びた感じが優しさを感じさせるのかもしれない。
この「かつてあった町の名残」をピックアップする手法は前回であれば長者町エリアで顕著に見られた。失われかけている街の記憶を呼び起こし偲ばせる。岡崎は「縮みはじめている」。
岡崎のもう一つの会場は岡崎シビコ。ここには志賀理江子の「螺旋海岸」が展示されている。「螺旋海岸」は国立新美術館でも観ているけど、こちらの展示は会場が広く、得体のしれない空気の中を彷徨っている感が強い。ただ、この会場で一番インパクトを持っていたのは向井山朋子+ジャン・カルマンのインスタレーション作品だった。荒れ果てた会場にピアノ・ノイズが鳴り響く。今回のトリエンナーレのテーマ「揺れる大地」はもちろん東日本大震災を意識してのものだけど、このインスタレーションはその震災を連想させずにはいられない。荒れた景色の中を観客は寄る辺なさを抱えながら彷徨う。
この日は岡崎会場から名古屋に引き上げて、納屋橋会場をまわった。納屋橋では青木野枝のインスタレーションに再び。この会場はもともとボーリング場として作られたそうで、ところどころにその名残のような内装を残している。
この会場で個人的に引きが強かったのはもう一つ、名和晃平の大型インスタレーション作品があった。巨大な泡の塊で、会場を流れる風にかすかに揺れている。これもまた「揺れる大地」というテーマをうけているのは確かだと思う。全容を把握することができないランドスケープを持ち、しかし徐々に消えていく。移動する観客が起こす風圧にも揺れて、存在感を示しながらも脆いものだという印象も与える。それは確かにこの大地が持つ不確かさを表している。
ただ、あまったるい匂いがきつくて、個人的には苦手な類。この泡の塊、展示が終わったらどう処分するんでしょうね。
あいちトリエンナーレの会場はまだ栄、白川、長者町と三ケ所あるけれど、それは明日に。