■都現美では特撮博物館の展示がようやく終わり、次の企画展がはじまった。東京アートミーティング第三回の「アートと音楽」坂本龍一とか池田亮司、八木良太などの名前が並ぶけど、池田亮二の作品は以前に都現美の個展でもっと大型の展示として見ていたし、八木良太の「レコード」もたぶん3回は見ている。こういう作品もあるんですよ、という紹介の意味合いが大きいのかな。紹介という意味では同時開催のMOTアニュアル「風が吹けば桶屋が儲かる」もそんなところがあるかもしれない。あるシチュエーションを作り出すインスタレーション作品が多く、その点で状況的な文脈を持たない美術館内での展示は印象を弱めていたのではないかと思う。それでも美術館はホワイトキューブだけで出来上がっているわけでもなく、そうした美術館的にはネガのような空間を見つけてインストールした作品が面白かった。心底バックヤードな場所を解放することはできないだろうけど、純粋な展示空間とも違う、曖昧な空間が美術館にもあって、そうした場所の発見があったのも面白かった。
「アートと音楽」はセレスト・ブルシエ=ムジュノの『クリナメン』が面白かった。円形のプールに大小様々な磁器の椀が浮かんで、プールに作られた水流に乗って流れていく。椀同士は互いの運動によって衝突を繰り返すのだけど、そのときに鐘に似た音を響かせる。椀の運動はいわゆるカオスにあって、それらの衝突から生まれる響きの連鎖はランダムに続く。
『クリナメン』が作り出す響きの連鎖はプールに作られた水流の運動をトランスコードしたものと捉えることもできる。シミュレーションで完全に再現することは不可能にせよ、似たものを作ることなら可能だろう。ただ、その鐘の響きを多元連立方程式から導出される結果をトランスコードしたものとして捉えるのと同時に、音楽のタイムラインとして感じることができるのは人間だけだろう。
「アートと音楽」には坂本龍一+高谷史郎(+オノセイゲン)の『Silence spins』『Collapsed』が展示されていたけど、あまり感心しなかった。自動ピアノにレーザーを使ったスティッカーを組み合わせているのだけど、壁に投影された文字が不鮮明なのと、粗いドットでアルファベットを並べるので読みずらいことこの上ない。
「風が吹けば桶屋が儲かる」では田村友一郎の『深い沼』が面白かった。サイトスペシフィックな作品で、かつての木場にあった風景を点景として美術館の無機的な空間の中に創出する。地下駐車場3Fにまで潜って対面するインスタレーションが幻想的な体験をさせてくれる。昔見た夢の景色のようにも感じる。地下3Fはエレベーターでも行けるのだけど、できれば迷宮のような地下駐車場の車路を歩いて地下3Fにまで降りるようにしたらよかったのではないか。
というか、都現美の地下にあれだけの駐車施設があるとは知らなかった。地下駐車場が活用されているようには見えないのだけど。