■毎年この第一四半期というのは、美術館のスケジュールが痩せ気味で観に行くところを探すのが大変。地方ともなれば箱の数が少ないだけになおさら。それと交通費がだいぶかかるので、できれば幾つかまとめて見たい。とか欲をかくとさらに難しい。そんな中で正直あんまり期待していなかったのだけど、岡山県美で「CULTEX テキスタイルの色と形」があって、岡山に行くならついでに奈義町現美に行って見ようと。先日北九州市美で荒川修作の回顧展を見たばかりだし、その延長ということでちょうどいいかもしれない。
奈義町現代美術館は2回目。前回は記録的な猛暑が続いた盛夏の最中。今回は冬。景色は前回とうってかわって雪景色。数日前に珍しい大雪が降ったのだという。
常設は2回目となると初見で感じたような驚きはさすがにないのですが、宮脇愛子の『うつろひ』から受ける印象が変わり、「土地」が経過してきた時間を思わせる落ち着いた佇まいを感じていました。逆に岡崎和郎のHISASHIは、たぶん、外の景色と内部の空間が持つ雰囲気が似てしまったために異化効果が薄くなり、初見で感じた衝撃はありませんでした。神奈川県立近代美術館で岡崎の個展『御物補遺』を見ていたことも影響していたかもしれません。荒川修作の『偏在の場・奈義の龍安寺・建築的身体』は映画『インセプション』を思わせたりもします(もちろん、映画よりもこちらが先ですが)。あらゆる場所・時に遍く存在し、全てを見渡すという体験。狭い産道のような螺旋階段を上りきった先にあるのはこの世ならぬ風景の場所。確かに知ってしまった後に見ると印象は弱いのですが、作家が見せようと思ったものを想像すると面白い場所です。
企画展示室では「アートの今・岡山2010|具象表現の現在」が展示中でした。具象絵画なので、と言ってしまって良いのか、なんとなく見たような、という印象は拭えませんでした。タブローよりは立体造形作品の方が面白かったかな。片山康之の『冬虫夏草』や『夜ヲ食ウ犬』(木彫刻)、藤原啓史の『スパースター』シリーズ(テラコッタ)がそれぞれ傾向は違うのですが、印象に残りました。片山の彫刻はどことなく舟越桂の人物像に似ているような気もするのですが、ただ、船越の作品に比べると、ずっと孤独が強調されているような点が違うように思いました。藤原の作品はポップな仕上がりで、どことなくひ弱な印象。
岡山からの移動時間が片道軽く3時間弱かかる場所。1時間ほどかけて一通り見終わったあと、岡山へとって帰りました。岡山県立美術館の企画展が目当てです。