■東京都現代美術館。同時開催は「田中敦子 アート・オブ・コネクティング」。常設は「福島秀子/クロニクル1964 - OFF MUSEUM」といずれも回顧展という格好になる。靉嘔の初期の作品は同館の常設ではおなじみ。素朴な生命力・力強さを感じさせる作品。暖かい色合いが多用されることが多いが、後年、それは「虹」と呼び表されるグラデーションへと変わる。ビタミンカラーとは違うが、明るく、力をもらうような作品が多い。
ただ、展示によれば絵画だけではなく、インスタレーションやスカルプチャーなども手がけられていて、60年代前後のフルクサスに参加していた頃の作品は見覚えのあるような懐かしく洒落た小品や大がかりなライティング作品もある。その制作の振幅の幅に最初は雑多な印象を覚えたが、歳を追うにつれそれらの作品は次第に統合され、1つのスタイルへと収束していく。それを縮小再生産と観ることも可能だけど、若い時期は個別に出てきていたフラグメントを再配置してまとめあげる、また違った技術の発露のように思えました。
田中敦子をフィーチャーした企画は豊田でも一度見ていましたが、こちらはもうちょっと大きな規模で。初めて田中敦子作品に接したときは文脈も何もわからずベルはうるさいし、電気服は重くて暑そうで(実際そうだったとのことだけど)、という感じでしたが、今回はドローイングで特徴的だった無数の円が連結されたパターンが全く独立して出てきたわけではなく、作家の個人史の流れの中で生まれてきたものだったということが解ったように思います。2000年も過ぎてから制作された比較的新しい作品が清清しさを持っていてとても好きでした。
常設の「クロニクル1964」は同館が常設で続けている「読売アンデパンダン展」などのミッドセンチュリーもので新味はなし。福島秀子をフィーチャーした特別展はきれいな色合いのものもあり、ちょっと良かった。個人的に明るい色あいだとそれだけでポイントが高くなってしまうのでしかたない。
全体として回顧展としてまとまってしまったのはものたりない感じもしますが、靉嘔展のビビッドな色合いに触れることができたのは良かったと思っています。