■YCAMというのは山口情報芸術センターのことで、山口市にあります。メディア・アートを扱っていることでICCライクな活動をしているらしい、という話は何かで読んだことがあるのですが、関東からではそうそう訪れることができる場所でもなく。ただ、今は山口にいるわけですから、ちょうどいい。

YCAMを訪ねたのは梅雨なんだか明けたんだかよくわからない蒸し暑い日でした。山陽本線で新山口駅に行き、そこから山口線で山口駅へ。YCAMはその山口駅から徒歩25分のところにあります。それだけで拡散してしまった街づくりが伺えるというものですが、その予感は違わず。国道沿いに街の軸が伸びているようです。

事前に地図で確かめて、NHK山口放送局が並びにあることは知っていました。その放送設備らしきパラボラアンテナの柱を目当てに歩けばYCAMのあるビッグウェーブやまぐちの建物に行き当たります。今回はJRの線路側からアプローチしたのですが、分譲地という雰囲気でもない民家の立ち並ぶエリアが突如断ち切れて、真新しいNHKの建物とビッグウェーブやまぐちの建物がある敷地に出たので少々面食らいました。かつてここに何があったのかはわかりませんが、再開発されたのは確実だろうと思いました。アプローチしたのと反対側、県道204号に面する側はかなり広大な開放空地(「中央公園」)として芝生が植えられており、だいぶ贅沢な造りです。

ビッグウェーブやまぐちの中には図書館もあり、館内にあるあらゆる机と椅子は自習している学生に占拠されていました。図書館を利用する方も多いようで、人の流れは途絶えないようです。街中にある学習施設とアートという組み合わせは、先日見たせんだいメディアテークを彷彿とさせます。ただ、施設を取り巻く街区の稠密さという点では仙台には遠く及びません。
それはそれとして、今回のYCAMの企画展示はそうした施設に訪れる人が行きかう空間の中で無料で公開されているのでした。

スティーブ・パクストンは振付師/ダンサーで、企画展示「Phantom Exhibition~背骨のためのマテリアル」は彼のメソッドをビデオ撮影したインスタレーション展示。平行して「インターイメージとしての身体」と題してやはりダンサーを扱ったメディア作品を展示。ただし、「Pascal pass scale」については機材調整中で観ることはできませんでした。
無料公開しているのはそれはそれで喜ばしいことだと思うのですが、展示エリアの領域が不明で、どこに何があるのか良く解らないのは難儀しました。なにせはじめての建物だし。
面白かったのは「Phantom Exhibition」もそうなのですが、それとは別に勅使河原三郎のダンスを納めたビデオ映像でした。
普段の生活の中で身体を動かしていても、その身体の部位についていちいち意識することはありません。ビデオ映像の中でダンサーはその身体を意識して自在に動かしているように見えます。ただ、それでも重力と慣性のくびきから逃れられるわけではありません。映像を見ていると重心の移動や身体が持っている慣性を殺そうとする動き、あるいは静的安定を崩して運動に入る様子がわかります。いかに自在に身体をコントロールするダンサーと言えども物理法則を無視することができないのは当然のことですが、彼らはその制約の中で身体の自由度の限界を探っているようにも見えました。