■戦後まもなくから始まる日本の現代美術活動の回顧展というのは何度か観る機会があって、都現美の「読売アンデパンダン展」をテーマにした常設とか、昨年7月に国立新美であった「具体展」とか。そして今回神奈川近代美術館で始まった「実験工房展」もその系統になる回顧展。
実験工房(artspace,wikipedia)は瀧口修造が主催した芸術家グループ、とのこと。作曲家が多いのが特徴なのかな。
展示されていた作品、あるいは記録は当時の雑誌やパンフレット、スライド映像が多い。舞台美術はビジュアル的には古臭く、というより洗練されていないように見えてしまうけれど、その一方でモビール作品は今見ても魅力的で、たぶんこの違いはそれまでのデザインの蓄積の差なのだろうと思う。
面白いと思ったのは、「大阪万博」が一つのピリオドになっていることで、新美での「具体展」もそうだったのだけど、あの時期を境にして実験的な集団の活動は下火になっていったようだ。戦後から大阪万博までの期間は約35年あり、その中で美術家層の世代交代も進んでいったのだろう。大阪万博の頃を境にして「前衛芸術」の認知が進み、ことさら集団活動をせずとも発表の場が得られるようになったのか、そのあたりの動きについては不勉強につきわからない。ただ、大阪万博までの幾つかあった芸術家集団の活動期がそれだけで約一世代あり、今は大阪万博からさらに一世代たっているわけで、そういう意味では今は第三ピリオドに入っているといえる。最近は現代美術の認知も高くなってきた一方で社会全般の活動は停滞に入っている。その中で「実験工房」や「具体」から続く系譜はどう変化していくのか、今は潮目の中にいるのかもしれない。
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