■京橋のINAXから末広町の3331。INAXギャラリーは「種子のデザイン-旅するかたち-」「桝本佳子-パノラマのうつわ-」「今野朋子展 -陶 夢想のいきものたち-」の3つ。3331ではバンビナートギャラリーとアキバタマビが面白かった。INAXギャラリーに行くときはたいてい資生堂ギャラリーとセットなのだけど、資生堂ギャラリーはまだ企画展が切り替わっていないので今回はパス。
INAXギャラリーは、今回は少し弱い。桝本佳子の個展は、会場入り口に離れておかれたオブジェが面白かった。時代を経て古びて見える壷が自らポップな、流行の姿に変わろうとしているような。フィックスしたフォルムを持つ無生物が、姿を変えようとし、その変態の途中で力尽きてしまったかのような。
「パノラマのうつわ」は生活空間の中で普通にみかける陶磁器の色や描かれた風景が実体としてのパノラマへ変貌する場を提示したインスタレーション。大皿、小皿、壷、とっくりが団地や学校、商店街、遠い山の風景へ姿を変える楽しい作品。もともと壷に山野を描くのは、酒席や生活の中の慰みとしての目的があったと思うけど、桝本はその風景を立体化してみせる。ファンタジックなシーンを作る。
「夢想のいきものたち」は花のような生き物のような造形を陶芸で作り、展示室を埋める。和やかな空間であると同時に、その造形は博物学的展示である「種子のデザイン」と呼応する。
全体的にまとまった展示となっていたけれど、強く印象を残す感じはなく。
京橋を後にして末広町へ。3331ではバンビナートで「吉澤知美展」。少女の人物画を中心としたドローイング。内に力を溜め込んだような緊張感がある。存在感があり力強いけれど自分にはちょっと苦手。アキバマタビは学生作品の展示会。昔のZAIMでよくみた展示を思い出して懐かしい。観たことがあるような、ないような、という感じ。幾枚もの写真をたぶん和紙に印刷し、重ねてフィルムでラッピングし、一枚の板状に仕上げた「水鏡」という作品が〈記憶〉の表現として直感的に伝わってよかった。表現形態としては他で観た覚えがあるのですが(ゲームとか)、素朴なモノとして目の前にすると印象は少し変わります。あと少し丁寧に作ってあって、本当の一枚氷のように見えると良かったかも。
3331を後にして、2K450へ。ここは商業施設で、手工芸を中心とした小売店舗が多く入居している。アクセサリーや生活雑貨が中心であまり用を感じないのは残念だけど、「器屋tuku」の焼き物には惹かれる。ただ、普通の器だとコレクションしてもあとが困るから、そこが問題。でもこれから定点観察しようと思いました。3331と2K540、秋葉原と御徒町の間に、高付加価値としての手工業を扱うクラスターができつつあるのかもしれません。