■クートラスを知ったのはETVのアートシーンでした。松涛美術館で開催されているロベール・クートラス展「夜を包む色彩」がとりあげられていて、その中で小さなカードボードに文字が描きこまれた小品がタイルのように並べられ配置された作品に惹かれました。「全てのカルト」(英語だと'Card of All'だと思う)という作品ですが、1枚1枚のカードが独立した個々の作品というより、それらカードが組み合わさって1つの世界観を作り出しているように感じます。ジョゼフ・コーネルの〈箱〉に似た印象を受けました。
会場にあった図録ではカード一枚一枚を独立して採録したものもあったのですが、カードをバラバラにしてしまうと印象が変わってしまう。カードに描かれた景色が組み合わさることで、物語のような世界が構築されるためだと思います。好みの問題とは思いますが、組み合わせた方が面白いと思いました。
カードには単純なパターンやシンプルなアイコンなども描かれているのですが、中にはエロティックな図象やリンゴの木に登るヘビなど、なんとなく冒涜的なものも混ざっていて、なんとなく楽しんで描いていたのだろうなあなどと感じました。
それとはまた別に「全てのカルト」の個々のカードサイズがスマホサイズで、こういう図柄のスマホカバーは欲しいなあと思いました。何か劇的な場面が描かれているわけでもないし、目を惹くような美男・美女が描かれているわけでもないのですが、内省的な印象を受ける絵柄は観ていて落ち着きますし、強い主張があるわけでもないので、いつまでも見飽きません。
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