■原美術館の新しい企画展は「MU ペドロ・コスタ&ルイ・シャフェス」 映像作家と彫刻作家の二人展。グループ展でたまたま映像作家と彫刻作家が参加している展覧会はままあったけど、意図的にビデオと彫刻のコンポジションによるインスタレーションを、二人の作家が作り上げた展覧会は初めてです。
原美術館はもともとが私邸で、美術館として白い壁と天井を持たせた展示室になっているけれど、家としての雰囲気は強く残している。なので壁にかける写真や絵画は特に違和感を覚えることはないのだけど、部屋の中央に大型の彫刻が鎮座すると異様な雰囲気が出てきて面白い。特に2Fの展示室がそのような印象を覚えることが多いです。もともとそれほど狭くはない部屋のはずですが、その広さの感覚がおかしくなってしまうことがあります。
小津安二郎を敬愛しているというだけあって、ペドロ・コスタの映像作品は市井の風景を淡々と撮り続けています。言葉がわからないので汲み取れないところも多かったのですが、シーンを追ってカメラが動くこともなく、ただ静かに撮られている景色を見ているとこちらもその景色の中に入っているような感覚を覚えます。ただ、「静かに撮っている」といっても撮られている景色はあんまり静かではなくて、けっこうやかましかったりします。
ルイ・シャフェスの彫刻はもちろん動かず、静かに存在感を示しているのですが、内側から膨張しているような動きを感じさせます。あるいは流れる雲のような。動いているのだけど、静かで主張を感じさせない映像作品と、動かないのだけど存在感を主張する彫刻の組み合わせは思ったほどちぐはぐなものではありませんでした。
ただ、一つの展示室で映像と彫刻を組み合わせるというのは、さすがに難しかったようです。上映室は暗くするので彫刻を置くと(ぶつかって)危ないということもあると思いますが。
ルイ・シャフェスの彫刻については、展示室外の展示も面白かったです。1Fサンルームから美術館の裏庭を眺めることができますが、その庭園風景の中に「月光」という作品が佇んでいます。紅葉の色鮮やかな庭の中に黒い彫刻が佇む様子は、しかし紅葉が勝っていたように思います。もう少し季節が進んで、紅葉も色があせてくると印象はまた違ってくると思いますが。