■国立新美術館での企画展。ここはメジャーどころしかないので、あんまり通うことはないだろうなと思っていたのですが、今回はアメリカン・モダンアートということで、ジョージア・オキーフ、ロックウェル・ケント、エドワード・ホッパー、グランマ・モーゼス、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、フィリップ・ガストンなどなど、あちこちの近美コレクションで名前を見る画家の作品が揃っているので、ここはひとつお勉強。
時期的には印象派以前から始まり、抽象表現への変遷を追いかける。19世紀終盤から1950年前後頃まで。写実的なリアリズムが印象派を経て写実から抽象表現へ、他者と共有するリアルを描くことから作家の主観的リアルを描くことへと変化していく過程を辿ることになる。
面白かったのは、グランマ・モーゼスらの描くアメリカのカントリーシーンを観ていると、なんとなくブリューゲルの作品を連想したこと。絵柄やトーンが似ているわけではなくて、そこに描かれている、田舎の空気が似通っているように感じました。ただ、ブリューゲルの作品と違うのは、アメリカのカントリーには工業化や黒人解放後の市民権運動などのめまぐるしい社会情勢の変化が背景にあったことで、その様子も絵には表れてくる。
もう一つ面白かったのは人物画の変化で、写実を求め、臨場感を増していった19世紀後半の人物画は次第に臨場感を失い、ディテールの定かでない背景の中でただ、存在として描かれるのみとなる。この人物像の変化はこの後、ウォーホルらのポップアートというコンテキストの中で扱われると、もはや描かれる対象は画家の前から消えてしまい、マスの中にこだまするイメージの複製という一種の虚像になってしまう。が、今回のフィリップコレクション展ではそこまではフォローしていない。