■横浜美術館の「マックル・エルンスト フィギュア・スケープ」につづいて、奈良美智の「君や僕にちょっと似ている」。先日の水戸芸では昨年の震災に対するレクイエムにも似た展示がされていたが、横浜美術館の展示はずっとニュートラルな感じ。常設展示は都現美でも横浜美でも開かれていて露出の機会は多く、新鮮味をあまり感じないのは仕方ないのかもしれないけど、今回の展示は彫刻作品も多く展示されていて、そこは面白かった。
挑みかけるような眼をした少女の絵が特徴だと思うけど、最近の作品は瞳が優しい。突っ張っている感じは、水戸芸の展示ではあったけど、今回の展示では少ない。瞳がきらきらと色鮮やかに輝くように作られた彫像作品もあり、どこか加藤泉の人物像を思わせて面白かった。「眼」が力を持っている作品だと思う。
少女という同じモチーフを繰り返し使っているけれど、そこに描かれている少女はやはり、外から見られている姿としての少女なのだなと思う。一種の理想としての、あるいは代弁者としての少女像。同じく少女を繰り返しモチーフとして使っていた展覧会というと昨年の東京国立近代美術館で開催されていたイケムラレイコを思い出すのだけど、少女の当事者だった人と、常に外部から観察するだけの人とでは少しトーンに違いが出てくると思う。
もっとも作者コメントにあるように「作者自身も幾分投影されている」のだから、生身の少女を描いているわけではないわけで、それはそういうものなのだろう。
常設展示は人物画を中心にした展示で、奈良美智の横浜美コレクションと組み合わせて展示しているのが面白い。奈良美智の少女像はそれだけだとコミックというかイラストレーション的にも見えてしまうのだけど、トラディショナルな人物画の延長として観ると、抽象画的作品になっていることが解る。この常設展示の見せ方は横浜トリエンナーレでも採っていた方法で、企画展のスペースと常設展のスペースがもともときれいに分離していない構造を持つ横浜美術館ならではの見せ方で面白いと思う。今後もこうした展示方法を採ってくれると嬉しい。